第18章 3人の容疑者──bourbon
「け、警察が来てるの?」
蘭が驚いたように言った。
「まず来るのは、刑事部捜査第一課に編成されている特殊捜査班、通称SIT……。人質立て篭もり事件とかが発生した際に重装備で出動し、犯人が説得に応じない場合は強行突入を敢行する……。
だからもうそのドアの外に来てて、突入の機会を窺ってるはず……」
蘭が「え?」とドアの方を見る。
「屋上から狙撃しようとしてるってことは、特殊急襲部隊SATも支援に来てるみたいだね……」世良が続けた。
「し、新一が呼んだの?」
「まぁ、呼ばなくても来ちゃうよ……。この下の店の客達を避難させるには、警察にこの状況を説明しなきゃいけないから……」
そして世良は顎に指を添え、考え込む素振りをみせた。
「でも未だに警察による説得が開始されていない所を見ると……相当信頼されてるようだね……君の彼氏……」
『彼氏』というワードに、蘭の頬は朱に染まる。
「何しろ相手は、自分の体に巻いた爆弾のスイッチに指をかけてるクレイジーな男……。下手に突入したり、急所を外して狙撃したりして男を動揺させたら……スイッチを押されてボクらも吹っ飛んじゃう……。
それを止めるには説得するか、一撃で仕留めるしかなさそうだね……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──瀬里奈side
《まだ解けねぇのかよ工藤新一!?そっちのパソコンにも送ったはずだぞ!妹が殺される前にSNSで打ち込んだ呟きを!》
『最初にサインをねだりに来たのはゾウ……
風呂上がりでまだ髪も乾かしてないのにせっかちなゾウね……』
『次に来たのはキツネ……
また言いがかりをつけて来た
うざいうざい……サイン書いたんだから早く帰ってよ……』
『最後に来たのはKYのネズミ……
速攻でサイン書いてさっさと追っ払っちゃお……
うっざー、まだ居座ってるよ……
ヤバ……眠くなって来た……どうしよう……』
《……で、呟きは終わってる……。つまり……この3人の中にいるんだよ……一番最後にやって来て、妹を眠らせ風呂場で手首を切り、自殺に見せかけて殺した……
ネズミって奴がな!》
と、子供達が階段の陰から覗いていた。
「どうしたのみんな?寝てなさいって言われたでしょ?」
そう言うと、子供達は不満げな顔をして口々に言った。