第18章 3人の容疑者──bourbon
《そ、それは未紅さんがサイン書き終わったのに、意地悪してなかなか返してくれなかったからよ!》
意地悪?
《あの日、私はお腹を壊しててトイレが近かったのに、未紅さんの部屋のトイレ使わせてくれなかったのよ!すぐに自分が使うからダメって言われてね!》
光井さんが被害者への不満をぶちまけるように言った。
《まぁ、嫌がらせだってことは分かってたわ!温泉の大浴場に入って来たくせに、部屋の風呂に入ったなんて嘘ついてたし……》
《何で嘘だって分かんだよ?》
爆弾男の声がした。
《だって未紅さんの部屋から出る時、私、間違えて彼女のスリッパ履いたらぐっしょり湿ってて温かかったもの!》
《あら、私、彼女の部屋に上がる時、彼女のスリッパも揃えましたけど……濡れていなかったし温かくもなかったわ……》
これは二瓶さんか。
《自分のスリッパを履いたんじゃないですか?脂性みたいだし……》
《失礼ねぇ!私は乾燥肌よ!》
湯地さんと光井さんで言い合う声が聞こえる。そばで爆弾男が《うるせぇおばさん連中だ!小鳥みてーにピーチクパーチク!》と言った。
《まぁ、そう言う俺も妹にうるさくしてたから……ウグイスって妙なあだ名をつけられていたがな……》
ウグイス……?
ゾウにキツネにネズミ……お兄さんはウグイス……。
(そうか!)
未紅さんのあだ名の法則が分かり、私はハッと表情を変えた。
隣にいたコナン君もハッと表情を変え、ニヤリと笑った。
「コナン君、分かった?」
「ああ……間違いない、犯人はあの人だ!」
2人でニヤリ、と笑い合うと、そばにいた哀ちゃんが言った。
「その顔はいつもの分かっちゃったって顔のようだけど……どうする気?たとえ犯人を言い当てたとしても……探偵事務所に死体が2つ転がることになるわよ!」