第18章 3人の容疑者──bourbon
《え、ええ……。未紅さんを含めた私達4人の中で、最初に100万部を突破した人が温泉旅行に招待すると約束をしていて……》
《ベストセラー作家になったのは未紅さんだったから……どーせなら、その旅館で彼女にもらってたデビュー作の初版本に、サインを入れてもらおうってSNSで盛り上がってて……》
《だからあの日、それぞれ彼女の部屋にお邪魔しましたのよ……。まぁ、偶然3人共すれ違いだったようですけど……》
3人が持ってきた本には、それぞれサインと日付が入っているらしい。この3人が事件のあったあの日、妹さんに会った証拠だ。
《それによぉ!妹はその時の様子をSNSで実況中継で呟いてたんだ!これがその呟きのコピーだよ!》
どうやら未紅さんは兄である彼のIDを使って呟いていたらしく、おばさん達は見ていなかったという。
呟きには──
『最初のサインをねだりにきたのはゾウ……
風呂上がりでまだ髪も乾かしてないのにやっかいなゾウね』
『次に来たのはキツネ……
また言いがかりをつけて来た……
うざいうざい……サイン書いたんだから早く帰ってよ!』
『最後に来たのはKYのネズミ……
速攻でサイン書いてとっとと追っ払っちゃお!
うっざ──まだ居座ってるよ……
ヤバ……眠くなって来た……どうしよう……』
被害者の沢栗未紅さんは、人を動物に例えるのが好きだったらしく、呟きでもそう呼んでいたらしい。
《な?これで分かっただろ?こんな呟きを残してる妹が自殺なんてするわけねーってことと……この3人の中に、一番最後にやって来て妹を眠らせ、自殺に見せかけて殺した……ネズミがいるってことがな!》