第18章 3人の容疑者──bourbon
哀ちゃんが沢栗未紅さんが自殺したという旅館について調べてくれた。
「事件の日時は先月の14日……。一緒に行ってたその小説家3人の写真も出てるわ……。あら、その旅館……今、探偵事務所に立て籠もっている男も一緒について行ってたみたいね……遺体の第一発見者はら隣の部屋にいた彼のようだから……
妹から『サヨナラ』というメールをもらい、不審に思い妹の部屋をノックしたけど返事がなく……仕方ないから、ベランダ伝いに窓を破って妹の部屋に入ったら……部屋中に湯気が立ち込めていて……その部屋の風呂場で切った手首を湯船に浸け、部屋の鍵と携帯を握りしめて息絶えている妹を見つけたって彼は証言したようね……もちろん、部屋の鍵はオートロックじゃなかった……」
哀ちゃんが3人の写真をプリントアウトしてくれた。
……つまり、完全な密室だったというわけだ。
なのに何で、その男は殺人だって言い張っているのだろう。
「もしかしてその旅館の名前って降塚屋か?」
博士が哀ちゃんに訊いた。哀ちゃんも「ええ……」と答える。
「だったら先月、ポアロのマスターが町内会のみんなと行った温泉旅館じゃよ!『毛利君が来てたら眠りの小五郎が見れたかも』ってマスターが言っておったから……」
「その町内会の面子って分かるか?」
「あ、ああ……その時みんなで撮った写メをマスターから送ってもらったからのォ……」
言いつつ博士が携帯を出した。コナンがすぐさま指示を出す。
「じゃあオメーらは、博士の写メに写ってるマスター以外の人の所に行って、プリントアウトしたこの3人の事件前後の様子を聞いて来てくれ!」
「でもマスターはどうするんですか?」
光彦君が訊いた。それには私が答える。
「マスターがいる喫茶店ポアロは探偵事務所の真下!私が警察に連絡して、客と一緒に避難させるから……あの周辺には絶対に近づかないで!」
と、哀ちゃんがコナン君を見下ろして笑った。
「でもやるじゃない……あの探偵事務所の彼女……」
「ん?」
「電話を切ったフリをして携帯ストラップのマスコットを挟み……通話中のままにしたんでしょ?」
「いや……それをやったのは蘭じゃねぇ……」
「え?」
「なぜかいるんだよ、探偵事務所に……さっき話してた世良っていう探偵もな!」