第18章 3人の容疑者──bourbon
「博士っ」
私は博士のいるであろうリビングへ顔を出した。
幼い頃から新一と入り浸っていたこの家は、もう勝手知ったるといった感じ。
「おお、瀬里奈君!どうしたんじゃ?」
「ん、前に頼んでた携帯の修理終わったかなって」
そう、私は博士に携帯の修理を頼んでいたのだ。
博士は思い出したように近くの棚から箱を出した。
「ホレ、ここにあるぞ」
「わっ、ありがと!すご、ヒビとか全部直ってる!」
私は修理し終えた携帯を見てはしゃいだ。
リビングでは子供達がリュックに何やら荷物を詰め込んでいる。
「ねぇ、哀ちゃん」
「何?」
「みんなでここに集まって何してるの?もしかして今日泊まり?」
私がそう訊くと、哀ちゃんはコクリと頷いた。
「ええ。明日の朝早くにキャンプへ出かけるから……」
「そうなんだ?……で、あそこの子供達は何をやってるの?」
私が指したのは元太君と光彦君、コナン君の3人のこと。
コナン君は何やら不服そうな、照れているような変な顔で電話をかけていた。
「ああ……愛しの彼女が知らない男と歩いてたっていうから、工藤君がヤキモチ焼いて電話してるのよ……」
「……あら」
私は苦笑した。
電話は繋がったらしく、「あ、蘭姉ちゃん?」とコナン君は話し始めた。
「ボクだけど……今、電話マズかった?──どーでもいいことなんだけど元太達がさー、蘭姉ちゃんが知らない男と歩いてたっていうからね……」
それから数秒後、コナン君の表情が変わった。
「ど、どうしたの?」
「わっ、瀬里奈姉ちゃん!ちょっと静かにしてて……」
「え?」
やがてコナン君は携帯を耳から離し、通話中のままにした。
「え?何、携帯繋がってるの?」
「ああ、通話中のままだよ……」
電話から聞こえた話を整理すると、毛利探偵事務所に女流ミステリー作家3人と、拳銃を手にした男がやって来て、死にたくなければ事件を解けと小五郎さんに要求した。
解いて欲しいのはその男の妹である直本賞を取ったミステリー作家、沢栗未紅さんの事件の真相。
妹さんは自殺ではなく、先月妹さんと一緒に群馬の温泉に行ったその3人の作家の中の誰かに殺されたんだ、と言っていたらしい。
しかもその男は体に爆弾を巻いていて、犯人が分かったらその犯人と心中しようとしているらしいのだ。