第18章 3人の容疑者──bourbon
青子とは快斗のガールフレンド。高校に入ってから、紅子や白馬探といった友達もできたらしく、私のお菓子は3人にも好評らしい。
「それは嬉しいけど……。私もなかなか作れないし、あんたと時間もあまり合わないでしょ?」
「そこを何とか!頼む!」
「もう……」
私にとっては、手のかかるワガママな弟を持った気分だ。
「……分かったわよ。快斗の家のポストにでも入れといてあげるから……」
「ホントか!サンキュー瀬里奈!」
「ハイハイ、分かったからもう帰りなさい。Go home!!」
「何か英語の発音良すぎだろお前!」
お互いに笑いながら別れる。「じゃあ、またね」と再会できると信じて挨拶をした。
悲しい色の「サヨナラ」と「ゴメンネ」は私の嫌いな言葉。
「また……ね」
私は快斗が飛んでいった方向を見て、小さく呟いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──数日後。
私はデビューシングルの打ち合わせのため、マネージャーと一緒にポアロにいた。
「じゃあそういうことで。明日はボイトレがあるから、家に迎えに行くわね」
「はい、ありがとうございます!お疲れ様でした……」
マネージャーと別れ、私はぐーっと背伸びをした。
「あー、つっかれた……」
「こっちまで緊張しましたよ、もう……」
梓さんが苦笑いで話す。私も苦笑いで返した。
「だーってマネージャーが『あなたの家に近い所でいいわよ』とか言うんですもん……仕方ないじゃないですか」
「まあ、楽しそうで何よりですよ♪」
ふふ、と笑いながらポアロを出る。
「……あ、そうだ」私はふと思い出して博士の家に行った。