第18章 3人の容疑者──bourbon
「快斗……?何で、キッドの格好してるの……?」
私は思わずそう呟いた。
キッド──快斗は大きくため息をつく。
「……あー、話せば長くなるんだけど……」
「いいよ、教えて?──包み隠さず、ね」
そして話を聞いた。
話を聞き終わると、私は快斗の頭を優しく撫でた。
「よく頑張ってるじゃない?あの名探偵と互角に戦えるなんて、さ」
「そうかぁ?」
「そうそう。──それに、これは私と快斗、じいやさんだけの秘密……でしょ?」
「ああ。……悪ィな」
「今さらでしょ。それに、私は10年前に助けられた恩があるし?」
「結構昔だよな、それ」
「記憶力いいのよ」
そんなふざけた会話をする。
まるで初めて出会った時のように。
「ホラ、体拭けたから。キッドの仕事に関しては、できる限りの協力はしてあげる。だから早く帰んなさい。──風邪引いたら困るでしょ?」
そう言って笑うと、快斗はニヤッと笑った。
「いい女だな、オメー」
「それも今更。はい、帰った帰った!」
それからはずっと快斗とは協力体制を築いている。
仲のいい友人として、秘密を知る数少ない人物としても──
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……懐かしいこと思い出しちゃった」
私はベランダに出て、くすくすと思い出し笑いをした。
と、空の彼方から白い物が飛んでくる。ぎょっとして部屋に避難すると──
「……っ、テテテ……。よ、よお瀬里奈……」
「……また来たの?」
私が苦笑いで迎えたのは──怪盗キッドに扮した快斗だった。
「何しに来たのよ、全く……」
「悪ィ悪ィ……。風に煽られちまってよ……」
「部屋入る?寒いでしょ、外じゃ」
そう言ったが、快斗は首を横に振った。
「いや、いいよ。少し話したかっただけだから……」
「あら、嬉しいこと言ってくれるのね?」
ふざけて返すが、快斗は何も言わなかった。その代わりに、頭を優しく撫でてくれる。
「……?」
「泣きそうな顔してっけど、大丈夫か?」
そう言われ、私は顔を俯けた。
そして目をごしごしっと擦る。
「……ん、平気。心配してくれてありがとね」
「ならいいけどよ。──また、色々菓子作ってくれよ。青子も楽しみにしてっからよ」
「また?食べ過ぎはダメよ?」
からかうように言う。