第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
「英語が読めなかったからですよ!犯人は意味が分からなかったから、怖くなって持って行ったんです!」
恐らく犯人は拳銃で社長を撃った後何か探し物とかしていた所、死んだと思った社長がペンを持ってメモ用紙を掴んでいることに気づき、自分のことが書かれたと思い慌ててメモを持ち去った。
だが、実は社長は何かを書こうとする前に息絶えてしまっており、そのメモは英語が読める人ならすぐに分かる、秘書への伝言だったのだ。
「つまり、塾で英語教師をやっているハル・バックナーさんや……社長と英語でメモのやり取りをしていたイリーナさん、FBI捜査官であるキャメルさんは除外され……。
そのメモを持ち去る可能性があるのは……英語が読めなかったと思われる……トビー・ケインズさんただ1人になるっていうわけですよ!」
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──第三者side
水無は車線の端に車を停め、赤井を待っていた。
何台か水無の前を通り過ぎて行き、まだ来ないのかと水無が腕時計を見た時。
反対車線から赤井のシボレーが来た。
「あらどうしたの?逆方向から来るなんて……」
赤井が運転席から出てくると、水無は彼に近づきながらそう言った。
「先回りして色々探らせてもらったよ……」
「そう……。それで?ちゃんと得られたのかしら?私が1人で来たっていう……確証は……」
「ああ……」
赤井はちらりと左側に視線を送り、「……のようだな……」と言った。それを水無のチョーカーに埋め込まれたカメラで見ているのは──ジンとウォッカだった。
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──瀬里奈side
「しょ、証拠は?まさか、ただ英語が読めねぇだけで犯人にする気じゃないだろうな!?」
そうわめくトビーさんの脇で、コナン君が少年探偵団に尋ねる。
「なあ、お前らならどうする?」
「え?」
「自分の悪口が書いてある紙を拾ったらだよ……」
「そんなのすぐすてちゃうかも……」「ムカつくしよ!」「読み返したくもないですしね!」
歩美ちゃん、元太君、光彦君が口々に言う。
「でもそれが読めない暗号か何かで書いてあったらどうする?」
「だったら絶対捨てないもん!」
「何が書いてあったか気になるからよォ!」
「持って帰って一生懸命調べて……あ……」
そこで高木刑事がトビーさんの上着を探る。と──
「やっぱり……」