第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
「もうすぐ僕が担当する授業が始まるので……」
「わ、私もホテルのレセプションに行って来てもいいでスカ?」
ハルさんがそう言うと、イリーナさんもおずおずというように言った。
「色々なキャンセルをしなきゃいけませんシ……もしかしたら今日、社長サンと会った人のこと何か分かるかもしれませんカラ……」
「そうねぇ……刑事と一緒に行くなら構わないんじゃない?」
ジョディさんがそう言った。
だがハルさんには今日の授業を諦めてもらうしかない。そう目暮警部が言うと、ハルさんは休む事情を直接塾長に伝えたいと言い、高木刑事はイリーナさんに、千葉刑事はハルさんに同行することになった。
それを見たトビーさんが「フン……」と鼻を鳴らす。
「人が1人殺されたってーのに、授業やパーティの方が気になるとは……いい神経してるねぇ……」
──やっぱり。私は心の中でそう思った。
ふとコナン君を見ると、何かに気づいたように目を丸くさせていた。
「……分かった?」
コナン君にそう訊くと、彼はニヤリと笑って頷く。
「ああ。……確かに見た目と中身が一致してるとは限らねーな……」
「でしょ?何事も見た目で判断するものじゃなくてよ……」
と、そばでジョディさんが携帯をいじりながら「What’s the hell!(も〜どうなってるの?)」と騒いでいた。コナン君がきょとんとしてジョディさんに尋ねる。
「え?どしたの?」
「例のタキシードのメモの意味、シュウなら分かると思ったんだけど……今朝からわたしの携帯調子悪くて繋がらないのよ……」
「……」
それを聞いたコナン君は、自分の携帯をジョディさんに貸した。
「いいの?友達のメールとか電話番号とか入ってるでしょ?」
ジョディさんは遠慮するように訊く。
「大丈夫だよ!メールはこの前データを移したし、電話番号はボクの携帯のSIMカードを抜けば分からなくなるし……。ジョディ先生の携帯のSIMカードを差せば、先生の携帯になっちゃうから!ボクの携帯、先生のと同じタイプだからね!」
「でも困るでしょ?携帯なかったら……」
「平気だよ!ボクもう1台持ってるからさ!」
コナン君はそう言って笑った。そして不思議そうな顔をして言う。
「けどさ、不思議だよね?外見は全然違う変わった形なのに……中身はよーく知ってる慣れ親しんだ元の携帯だなんて!」