第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
『私よ……水無怜奈……。今、大丈夫?周りに人いない?』
そう言われ、俺はジェイムズに静かにしているように、とジェスチャーで伝える。
「ああ……俺1人だが……」
『驚いたでしょ?組織に戻った私からこんなに早く電話があるなんて……』
「どういうことか説明しろ!」
『実は組織に居づらくなってて……抜けたいから、高飛びする手助けをして欲しいの……。もちろんFBIが欲しがってる情報は提供するから……』
今から2人きりで会えないかしら?
そう問われ、俺は頷いた。
「ああ……。そっちも1人なら構わんが……」
『じゃあ時間と場所は……後ほどメールで……』
「ああ……」
そう言って電話を切る。
ジェイムズが心配そうに覗き込んで来た。
「電話の相手は水無怜奈かね?」
「はい……。これから2人きりで会わないかと言って来ました……」
「2人きりということは罠かもしれん……。行かない方が賢明だが……」
「ええ……ですが……罠だとしたら私が行かなければ、彼女は十中八九殺される……」
そして俺は笑って、「大丈夫ですよ……」と言った。
「我ながら勘が働く方だと自負していますし、彼女もCIAの端くれ……うまく切り抜ける策が何かあるんでしょう……」
だがジェイムズは「ジョディ君を呼び出して、FBIとしての対応を……」と焦る。俺はその手を止めた。
「ど、どうしたんだね?」
怪訝な顔をするジェイムズに、俺はニヤリと笑った──
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──瀬里奈side
「えー……調査の結果……秘書のイリーナさんが日本語の読み書きが苦手で社長とのメールなどは全て英語で行なっていたことや……ハルさんがこの近くの塾で英語教師をやっていることや……トビーさんがファッション誌のモデルをやっていることは全て事実だと判明した!……キャメルさんが本当にFBIの捜査官かどうかということは、ジョディ捜査官を信じるとしよう……」
こちらからは以上だ!そう締める目暮警部に、ジョディさんが焦ったように訊いた。
「ちょっと!例のメモの謎は解けたの?」
「あ、だからそれはまだ調査中で……」
と、そこでハルさんが口を開いた。
「あ、あのー……ただ待っているだけなら、2時間くらい抜けたいんですけど……」