第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
──第三者side
ジョディはキャメルと隣同士で歩いていた。
「ねぇ……こんな時に訊くのはどうかと思うけど……2年前、何かあったの?あなた、この前言ってたじゃない!2年前にも日本に来たことあるような話……」
2年前といえば、まだ赤井が組織に潜入調査をしていた頃だ。
「……じゃあ聞いてるでしょ?捜査官のミスで組織の幹部を捕まえ損ねたことを……。そのミスをした捜査官というのが……自分なんですよ……」
赤井がその幹部と待ち合わせた倉庫にFBIが張り込んでいた時、ある1人の老人が来て座り込んでしまったらしい。
赤井は彼を無視していたが、キャメルは思わず声をかけてしまったのだ。『ここは危ないからいてはいけない』と。
だがその追い払った老人も待ち合わせていた組織の一員で、赤井と待ち合わせていたその幹部も姿を見せることはなく、赤井は組織にFBIだとバレてしまったのだ。
だから赤井に電話で今回の作戦に適任な人材はいないか、と訊かれた時、自ら運転手役に志願して日本に来たのだ。
死ぬかもしれないと言われていたが、結果的に赤井の彼女であった宮野明美を殺してしまったのは自分のミスが原因だから、と。
「赤井さんには『彼女も覚悟していたことだから気にするな』と言われていたんですがね……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──赤井side
『FBI?大君が?』
彼女──宮野明美が俺にそう尋ねる。まだ長髪だった俺は、組織では『諸星大』と名乗っていた。
『ああ……明日、決着をつけに行く……』
そう話した俺の言葉を彼女は笑い飛ばした。
『アハハ、バカね!嘘つくならもっとマシな嘘ついてよね……。そんなんじゃ……全然驚か……』
そう言う彼女の目には涙が浮かぶ。俺は思わず彼女の肩を掴んだ。
『お前知ってたな?知っていてなぜ俺から離れない!?お前を利用していたんだぞ!』
『……言わなきゃ分かんない?』
回想という名の夢は、ジェイムズの声で醒める。
「赤井君!」
どうやら俺は車の中で居眠りをしていたらしい。携帯が着信音を鳴らしていた。
電話に出ると──
「はい……」
『私よ……』
──組織にいるはずの彼女だった。