第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
──瀬里奈side
「わ、私のタキシードを……取って来てくれ?」
目暮警部が怪訝そうに訊いた。高木刑事が頷く。
後ろからジョディさんが説明を加えた。
「『Bring my tux』……
Bringは取って来て……tuxはtuxedo(タキシード)の略語なので……」
しかし、謎はまだある。
「メモを書いたペンにも紙にも社長の血が付着していて、筆跡も社長の字……。しかも千切られてなくなっているということは……銃で撃たれた社長が死ぬ間際に書き残し、それに気づいた犯人が持ち去った……ダイイングメッセージとしか思えんのだが……」
目暮警部がそう言うと、ハルさんとジョディさんが2人揃って声を上げた。
「No,No……
dying message(ダイイングメッセジ)!
──え?」
2人はまた揃って顔を見合わせる。高木刑事が納得したように言った。
「そっか、2人とも英語の先生でしたよね?」
その問いにハルさんが答える。
「た、確かに僕は……塾で英語を教えていますけど……。この人達はFBI(ビュロウ)の捜査官じゃありませんでした?」
「い、色々訳があって少しの間だけやってたのよ!ね、ダーリン♡」
ジョディさんはキャメルさんに相槌を求める。
目暮警部はそんな2人を無視し、イリーナさんに話しかけた。
「ところで秘書のイリーナさん……この『タキシードを取って来てくれ』という文に心当たりがありますか?」
「あ、ハイ……多分それは、社長サンが私に向けた伝言だと思いマス!今晩パーティがありますから、それまでに取って来てくれと……」
社長は今日、タレントの卵と食事に出ると言っていたらしく、社長の留守中にイリーナさんが帰って来ても分かるように伝言を残しているという。
だが彼女は警察が来るまで何も触っていないらしい。
「で、でもタキシードのこと知ってまシタ!留守番電話にもそう入れましたヨ……」
そしてしばらく別室待機ということになったが──
「何か分かった?そのメモ……」
私はコナン君に尋ねた。だが彼はよく分からないらしく──
「……じゃあ1つヒント」
「あん?」
「見た目と中身が一致してる人もいれば、一致してない人もいる……ってね」
「……はぁ?」
私の言葉に、コナン君は物凄い怪訝な顔をした。