第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
そしてジンは話し始めた。
「俺もそうだが、あの方も不審に思っておられるんだよ……。いとも簡単にお前をFBIから奪還できたことを……」
ならばそのFBIの切り札である赤井秀一を葬り、自らの身の潔白を証明して見せろ、とのことらしい。
それを聞いた水無は、動揺を隠せずにいた。それを見たジンが怪訝な顔をする。
「どうしたキール……。まさか出来ねぇ訳でもあるんじゃねぇだろーな?」
「訳も何も……ジン、あなたでさえ手を焼いている赤井を私がどうやって……?下手にFBIに近づけばまた捕まるわよ?」
「近づくんじゃねぇ……」
奴をこっちの射程距離(レンジ)に誘い込むんだよ……
ジンはそう説明した。
「組織に戻ったが、ヘマをやらかしてFBIに捕まった厄介者扱い……。居場所がないから組織を抜け、国外に逃げる手引きをしてくれとでも言ってな……」
もちろん呼び出すのは赤井1人で、彼を殺すのも水無1人。
組織の気配に気づけば罠だと見破り、踵を返されてしまうからだ。
「我々は奴の弾が届かない遠くから事の成り行きを拝ませてもらう……お前に仕込む盗聴器とカメラでな……」
「……」
それを聞いた水無は何か考えるそぶりを見せたが、やがて諦めたように言った。
「分かったわ……。言う通りにするから少し時間をくれる?」
だがジンは──
「いや……今、この場で奴を呼び出せ!出来なければお前に死神を呼ぶまでだ……」
そう言って水無に銃口を向けた。これにはさすがの水無も焦りを見せる。
「ちょ、ちょっと待ってよ……まさか本気で私がFBIに言いくるめられた、なんて思ってないでしょうね?」
ジンはニヤリ、と楽しそうに笑って答えた。
「それもあるが……仲間の掴んだ情報によると、奴らはまだ例の病院に留まっていて、どういう訳だか捜査官の1人がある事件に巻き込まれ、FBIの目は今そっちに向いている……。この機を逃すわけにはいかねぇな……」
「事件って……?」
「ああ……どっかの社長に風穴が空いた……ただの殺しだとよ……」
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