第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
そして、それらに付いていた血液の鑑定と、書かれていた字の割り出し、筆跡鑑定を行なった結果──
「ホゥ……。やはりペンとメモ用紙に付いていた血は社長本人の物だったか……」
「ええ……。書かれていた文字の跡も社長の筆跡だと……」
「で?何と書かれていたんだね?」
「そ、それが……英語で書かれていたんですが……。意味が何というか……とてもダイイングメッセージとは……」
高木刑事がそう話している後ろから、ジョディさんがそのメモを読んだ。
「Bring my tux……」
──私のタキシードを取ってきてくれ──
(……はぁ?)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──第三者side
──ある古い港。
コンテナの裏で女が電話をしていた。
「ええそうです……。この仕事、もう精神的に無理なんで降りたいんです……」
女の名は水無怜奈。
水無は「本当に申し訳ありません……。では……」と言い、電話を切る。と、何かに気づいたような反応をした。背中の方を見ると、銃口が向けられている。その相手は──
「誰だ?電話の相手は……」
──ジンだった。
「バカね……」水無は平静を装いながら答える。
「TV局の人事部長よ!こうなった以上、アナウンサーは続けられないから辞めるって言ったのよ……。ヘタに捜されても困るしね……」
そして水無はちらり、と周りを見た。
「それに、私が何を話していたかなんて組織に筒抜けのはずよ……私にはいくつも盗聴器と発信器を付けられていて……絶えず見張りが2〜3人付いているんだもの……」
水無はジンに向き直り、皮肉な表情で訊く。
「それで?未だにあの方に疑われ続けている不自由な私に……何か用かしら?」
「フン……その疑い深いあの方からの命令を伝えに来た……」
ジンは水無に布で包まれた拳銃を手渡した。
「ある人物を消し……お前のことを信じさせてくれと……」
「あら……。誰かしら?」
水無は銃を受け取りながら訊いた。ジンはニヤリと笑い──
「FBI捜査官……赤井秀一……」