第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
「いや、それはないよ!犯人は犯行後に屋上まで階段で上がってトイレに入り、服を脱いで手袋を外し拳銃と一緒に紙袋に入れ、トイレの用具入れに隠したんでしょ?だったら、やり終わるまでに5分くらい経っちゃうよ……」
慌ててそんなことをすれば周りに怪しまれるし、まさかこんな早く警察が来るとは思っていなかっただろうから。
また、エレベーターの監視カメラの映像には、外国人は映っていなかったという。
と、ジョディさんが千葉刑事に訊いた。
「アジア系の外国人は調べたの?見た目じゃ分かんないでしょ?」
「あ、いや……そこまでは……」
だが、それは秘書のイリーナさんが否定する。
「アジア系の外国人、社長サンは雇わないと思いマス!社長サンいつも言ってまシタ!とても日本人とは思えないひとが日本語を話すから面白いんだッテ……。だから怪しいのは、やっぱりその3人じゃないでスカ?」
イリーナさんの言葉を聞き、目暮警部は「一番疑わしいのは……」と切り出した。
「トイレに隠れていたハルさんってことになりますな!」
その言葉に、ハルさんは思い切り反発する。
「だから、隠れてたんじゃないって言ってるでしょ?それに、そんなものを隠したトイレの中に普通いつまでも隠れていませんよ!」
「そりゃそうだが……。駆けつけた刑事や警官の姿を見て、思わず隠れに戻ったということも……」
ちなみにコートは細身の男物。丈はちょうどトビーさんにピッタリ合うくらいだという。
だがそのぐらいのサイズなら、キャメルさんでも少しの無理を押せばいける。もちろんイリーナさんにも着れるのだ。
「とにかく、あなた方4人の中の誰かが社長に何発も銃弾を喰らわせたのは確かのようだ……」
「社長さん、弾じゃなく、本当に何か食ってたかも……」
いつの間にかコナン君が社長の遺体に近寄っていた。
社長の右手は、何かをつまんでいたような形で硬直している。
「でも机の上には食べ物なんてないし、何食ってたんだろ?」
その言葉でハッとする。食べていたんじゃなく、何かを持っていたとしたら──?そう、例えば……
「机の上のペンとか……」
私はぼそりと呟いた。
机の上のペン軸と、メモ用紙の端に僅かな血痕が残っていた。メモ用紙にはうっすらと何かが書かれていたような跡も残っている。