第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
「おいおい、うろついてたなんて人聞きが悪いなァ……。俺は何を食べようか品定めしてただけだぜ?」
トビーさんがニヤニヤと笑って言った。
「ホォー……日本語ペラペラですな!」
目暮警部が驚いたように言うと、トビーさんは「ああ……」と話した。
「父がアメリカ人で母が日本人!お陰でモデルをさせてもらっているよ!彫りの深い顔に生まれたからね……」
彼は『アンノン』というファッション誌でモデルをやっているらしい。
「あ、あのー……僕もトイレに隠れていたわけじゃありませんよ!ちょっとちょっと生徒のことで悩んでて……」
ハルさんも慌てて口を開いた。目暮警部が怪訝な顔をする。
「生徒?」
「あ、僕この近くの塾で英語教師をやらせてもらっているんですが……そこの生徒の1人が好きになってしまって……屋上のレストランに呼び出すつもりで来たのに、いざとなったらその言葉が思いつかなくて……」
そんな彼に、高木刑事は哀れむような視線を送った。
「だから青い顔してトイレから……」
「は、はい……悩むとこもりたくなるので……」
そして目暮警部の視線はキャメルさんに向かう。
「そして、汗まみれで階段を駆け下りていたあなたは一体何を?」
「み、見れば分かるでしょ?トレーニングですよ!」
キャメルさん曰く、「このホテルの階段は高さも長さもトレーニングにはうってつけなんですよ!仕事柄、体がなまると困るんで前も時間を見つけてよくここへ……」──らしい。
「『前も』って……」
高木刑事がきょとんとして問う。
「ええ!見つけたのは2年前に来日した時!ホラ、屋上のレストランにあるでしょ?特製フルーツジュース!トレーニング後に飲むあの味が忘れられなくて今日も……」
「んで?あなた、何の仕事をしているんだね?」
目暮警部に核心を突かれた。
今や刑事達には怪しまれ、子供達には殺し屋扱いされている。
「まぁ、観光客じゃないのは確かよね?」
「そうじゃのォ……。旅行先でトレーニングはあまりせんだろうし……」
「あ、いやこの人は……」
私とコナン君が慌てて庇おうとすると、子供達に質問責めに遭った。
「コナン君?私電話してくるからちょっとここにいて」
「えっ、瀬里奈姉ちゃん!?」
「しょうがないでしょ、あの人が何か不憫になってきちゃったんだもん」