第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
「えー……事件を整理すると……。殺害されたのはニュー米花ホテル39階のこの部屋に事務所を構えていた外国人タレントプロダクションの社長である須内廉治さん、51歳!凶器は拳銃……。
椅子に座ったまま上半身の6ヶ所を撃たれている……。
秘書の証言によると、本日午後1時25分頃、倉庫として使っている2階下の部屋で整理をしていた所……社長から『調べ物をしてくれ』との電話があり、その1分後に折り返し社長に電話をかけたら留守電になってしまい……ピックアップした資料を持ってここに来たらこの状態だったと……。それで間違いありませんな?」
「は、ハイ……」
目暮警部に確認を求められたイリーナさんは頷く。
「そして私、すぐに警察に電話しまシタ!警察来るの早くてビックリしましたケド……」
高木刑事達はちょうどこの近くで聞き込みをしていたため、1時30分にはここに到着していた。
そうなると、犯人が逃走に使える時間は5分前後。
「その時間はここのエレベーターの3基の内2基が使えず、しかもお昼時!動いている1基で下に降りようとすれば、屋上のレストラン街から降りて来るお客さんで満員だったと予想され……満員だと乗れない場合がありますし、拳銃を撃った後の火薬の臭いをさせて乗るのは避けると思いますから……」
犯人の行き場所は、階段を5階上がってレストラン街に行き何食わぬ顔で食事をしているか……
そのレストラン街のトイレに隠れているか……
39階から1階までの階段で降りているか……その3択になる。
そして社長が、街で見つけたタレントの卵と今日会う約束をしていたという話を踏まえると、容疑者は外国人になり……
屋上のレストラン街をうろついていたトビー・ケインズさん、そのフロアのトイレに潜んでいたハル・バックナーさん、階段を汗だくになって駆け下りていたアンドレ・キャメルさんの3人となるわけだ。