第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
「何で殺された時間が分かるんですか?」
サングラスを額の上に押し上げて、私は高木刑事に訊いた。
「その秘書は、2階下の倉庫として使っている部屋で整理をしていたそうですが……今から5分くらい前に社長に調べ物を頼まれて、1分後にその結果を報告しようと電話したら留守電になっていたらしいので……」
ふむ……。私は顎に手を当てて考え込んだ。
と、コナンが高木刑事に話す。
「……だとしたら、まだこのホテルの中にいるかもしれないね、犯人……」
「え?でも犯行時刻から5分以上経ってると思うけど……」
コナン君の言葉に、高木刑事はきょとんとした。
コナン君が説明を加える。
「だってホラ、3基あるエレベーターの内、2基は故障中と点検中……。1基動いてるけど、みんなが乗るからなかなか来ないし、屋上のレストラン街から降りてくるお客さんできっと満員だよ!」
それを聞いた高木刑事が納得したような表情になった。
「な、なるほど……。満員だと乗れないかもしれない……。拳銃を撃った後の火薬の臭いをさせて満員のエレベーターに乗るのは避けるというわけか!」
「待って……。ってことは……」
階段を5階上って屋上に行き、レストラン街で食事をしているか、そのフロアのトイレに隠れているか、汗だくで階段を降りているか……
「どれにしても日本語が話せて、タレントができそうな外国人なら……見つけやすいよね?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ではあなたがこの社長の死体を発見した時、この部屋には誰もいなかったんですな?」
「ハイ、そうデス!」
目暮警部に訊かれ、外国人の女秘書──イリーナ・パーマーが答えた。
「それで?社長に何の調べ物を頼まれたんですか?」
「10年前に雇ったタレントのファイルをピックアップしてくれと頼まれマシター!」
イリーナは困ったように言った。
「それが終わったノデー、持って行くですか?と電話したら……たくさんたくさんコールした後、留守番電話になってしまったのデース!」
「ちなみに、社長が今日会うはずだったそのタレントの卵に心当たりは本当にないんですか?」
「ハイ……社長サンは正式に採用するマデその人を誰にも会わせませんカラ……。私の時もそうでしたシー……」
「じゃああなたもタレントで?」