第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
私は「少し用があるから」とジンに近くの交差点で降ろしてもらう。
「じゃあ、私はここで……」
「待て、ルシアン」
「?」
歩き出そうとしていた私を、ジンが止めた。
「──今度、話がある。時間はあるな?」
「今度……?あるにはあるけど……何の話?」
「直に分かる……」
そう言い残し、ジンはキールを乗せて去って行った。
残された私はジンの車が見えなくなってから、杯戸中央病院に向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──第三者side
コンコンコンッと部屋に軽いノックの音が響いた。
近くの者がドアを開けると、「こんにちは〜」という、よく通る澄んだ声が聞こえた。
「……瀬里奈姉ちゃん!?」
「コナン君やっほ。……あの作戦の真意を訊きに来たんですけど……教えてくれますか?」
瀬里奈はまっすぐ赤井を見て言った。赤井はニヤリと笑いながら「今ちょうど話そうとしていた所だよ……」といい、話し始めた。
──やはり、赤井は水無怜奈を“わざと”組織に奪還させたらしい。組織がFBIの策を読み、まんまと出し抜いたと錯覚するように、コナンとじっくり作戦を練っていたらしい。
2人は、水無怜奈が再び組織の懐に潜り込んで色々探ってもらうためにわざと組織に渡したのだ。
組織の情報をCIA本部に報告した後で、こちらにも流すということで話をつけたのだという。
もちろん、それに釣り合う条件を提示されたようだが──
「証人保護プログラムか……」
瀬里奈はぽつりと呟いた。
病院への手当ては、水無怜奈が組織を言いくるめてくれるだろうけど──
「瑛祐君を丸め込むのは骨でしょうね……」
瀬里奈は小さく苦笑した。