第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
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「来たよ!来た来た!! ダークブルーのバンが1台……2台……3台!」
キャンティが杯戸中央病院の地下駐車場の向かいにある屋上から報告した。
「どうやら3台で打ち止めみたいだねぇ!!」
ジンがポルシェの中から指示を飛ばす。
「よォし……キャンティは1台目の車に張り付け!コルンは2台目!ウォッカ、お前は3台目だ!」
3人がそれぞれ準備が出来た頃、ジンがニヤリと笑って言った。
「俺とルシアンはこのまま病院周辺でFBIを張る……今の3台が全て囮の場合もあるからな……。それぞれ目標の車を捉えたら、例の方法で車の内側を探れ!どの車に絞るかは俺が決めてやる……」
私はパソコンを立ち上げ、助手席の無線を手の届く範囲に置いた。
まだ──彼女からの連絡はなし、と。
やがて、キャンティから1台目に張り付いたという報告が来た。それとほぼ同時に私のパソコンに車内の状況が送られる。
「どうだルシアン?」
ジンに聞かれ、私は無表情に報告した。
「サーモグラフィーで確認できる人影は9人。発信器が付いているようだけど……これは前の作戦の時の物?」
「ああ。まぁ後で教えてやるさ……」
「ありがと」
そしてコルン、ウォッカが送って来た画像を見る。
コルンの方も人影は9人だが、発信器はなし。ウォッカの方は人影が2人だけで、発信器もその2人が持っているようだ。
私は送られた3つの画像を画面にアップした。
「どう?決まりそう?」
ジンは相変わらず腕組みをして考え込んでいる。
そこで、ウォッカから新たな情報が入った。ウォッカの追っている3台目は、ぐるっと回って病院に逆戻りするコースを走っているらしい。
そこへ──
《お待たせ2人とも……》
無線から“彼女”の声が聞こえた。
彼女──ベルモットは、赤井秀一のシボレーを捜し当てるという命をあの方直々に言われていたのだ。
「手間取ったなベルモット……あの方直々の命令なんだろ?」
《悪かったわね……。こうなることを読んで、彼、1㎞先の駐車場に車を停めていたから……》
そしてベルモットから赤井さんの位置を聞き、ジンがマップを出す。
「1番近いのはコルンの追っている2台目……」
「後方200mって所かしらね……」
私もマップを覗き込みながら言った。