第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
『……で?どうやって組織が病院を突き止めたのかを知りたい、と?』
「そ。バーボンなら知ってるかと思って」
夜。
私はバーボン──安室さんに電話をかけていた。どうやって組織が病院を突き止めたのかを知りたかったから。探り屋としても有能な彼なら、おそらく知っているだろうと思って。
「知ってるでしょ?」
『……ルシアンの頼みなら仕方ありませんね』
バーボンは大きくため息をついてそう言った。未だに彼に『ルシアン』と呼ばれるのには慣れない。
『組織は杯戸中央病院にスパイを送り込んでいました。スパイの名は“楠田陸道”、コードネームも付いていない下っ端のようです』
「楠田陸道……ね。それで?」
『そのスパイから毎日のように来ていた報告が途絶えたんです。それで、楠田に何かあったと組織は考え──』
「病院をそこに絞った……と。ありがとバーボン、助かったわ」
私がそう言うと、バーボンも少しだけ声色を緩めた。
『こちらこそ、お役に立てたなら光栄ですよ』
「夜遅くにごめんなさい。じゃあお休みなさい」
『ええ。お休みなさい、瀬里奈さん』
名前を呼ばれたことに私がぎょっとしている間に電話は切れた。
「……仕事中に名前で呼ぶのはルール違反なんじゃ……」
私ははぁー、と大きくため息をついた。