第17章 赤と黒のクラッシュ──Kir
──瀬里奈side
その夜からしばらくした頃だった。
「えぇっ!? キールの入院先が分かった!?」
私がその知らせを受けたのは昼休みの時。ジンからの電話で、驚きつつも声量は自然と落とされる。
「そ、それで……どこなの?」
『杯戸中央病院だ』
「杯戸中央病院……ね。部屋は分かってるの?」
私は手近なメモ帳にその名前をメモした。既に知ってはいるが、念のためだ。
『いや、分かってない。だが……すぐに分かるさ』
「FBIが簡単に口を割ると思うの?それとも──何か策があるのかしら?」
その怪しげな声にそう訊くと、ジンは黙り込んだ。
『……ある』
少しの間を空けてジンが口を開く。
「あるの?」
『ああ。だがお前の出る幕はない……』
「はいはい、分かってますよ」
私は投げやりにそう言った。
「その代わり、キール奪還の時には出番作ってよ?何となく作戦は分かってるから……」
『ああ……お望み通りにしてやるよ……』
「どうも」
私はさらりとそう言い、電話を切った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……はー、演技ってしんどい」
席に戻ると、いつの間にいたのか樹と華南、真白といういつものメンバーが待っていた。
「おかーえり、瀬里。演技って何のこと?」
華南に訊かれ、私は「ちょっと面倒臭い人に、ね」と答える。これはジンにバレたら殺されそうだ。
キールが杯戸中央病院に入院しているのは知っていたが、私がそれを知っているのは不自然だから組織には隠し通している。
「……てゆーかどうやって知ったんだろ」
調べてみるか。そう呟いた声は3人には聞こえなかったようだ。