第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
──瀬里奈side
「待たしたな和葉!」
「何が待たしたやドアホ!今まで何やって──」
そう言い募る和葉ちゃんの腕の縄を斬り、向かって来る弟子達を退けていく。
「コラ工藤!よくもオレの服パクリよったな!」
そう言いつつ新一の頬を指で軽く摩った。
「何塗ったか知らんけどな、オレはここまで色黒ないで……」
「ヘヘッ……そうか……?」
「まぁええ……」
平次君は真面目な顔になって言った。
「ここはオレが引き受ける。お前は早よ行け!……小っさなるまでどっかに隠れとけよ。元に戻ったら帰って来い!」
平次君は小声でそう付け加えた。「新一こっち!」私も新一を誘導する。
それを逃がすまいと弟子達が追って来る。新一が私を振り返った。
「瀬里奈……ッ!」
「いいから早く行け、バカ!」
新一の背中を押して外へ無理矢理出す。
その間に平次君が新一を追わせまいと弟子達を退けていく。そして痺れを切らしたのか、西条が平次君に向かって攻撃を仕掛てきた。
だが──
西条に平次君の刀を折られた。
「焼きが甘すぎんで、この刀!」
「……平次君!」
私が叫ぶ。平次君の後ろで、弟子の1人が刀を振り上げていたのだ。だがそれは和葉ちゃんが相手を投げることで止める。
「2人とも!一旦奥へ!この人達は私が食い止める!」
私はさっきいた所よりも奥を指した。それを入れた2人はさらに奥へと逃げて行く。
「追えッ!」
西条が叫ぶが、──
「追わせるもんか!」
私は部下達を止めるべく応戦する。
だが義経流とは面倒なもので、私の聞きかじりの剣術では歯も立たない。只でさえ女というハンデを背負っているのに。
「クッソ……!」
「女といえど、手加減はせん!!!」
西条が刀を勢いよく振り上げた。間一髪で避ける。
かなりの威力だ。まともに食らったら命はないかもしれない。
その一瞬の隙に弟子達が何名か奥へ向かってしまう。
「あっ、待て!」
その数名を追おうとするが、こちらへ向かって来る他の弟子達に阻まれ追うことが出来ない。そこへ──
「うっ……!?」
腹に拳を入れられた。誰が──?そう思い、殴った犯人を見る。──西条だった。
「お前は女のクセになかなか手強かったからなァ……一時休戦や」
薄れいく意識の中で、それだけが聞こえた。