第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
「フン……」西条は鼻で笑い、話し始めた。
「オレは竜円達と町の剣道場へ通ってたんや……そやけどあん時、“義経流”ゆー古い流派が京都にあることを知った……。オレは独学で義経流を勉強した。そして2年前に剣道場を辞め、自ら義経流の後継者を名乗ったんや……!」
「弁慶が義経流か……」
平次が西条に向かって皮肉を言った。その言葉により西条の顔色が変わる。
「……オレは元々、弁慶より義経の方が好きやったんや……。──義経になりたかったんや!!」
西条はそう吐き出した。「そやのに……義経を頭に取られ、盗賊団で一番上に立つオレは弁慶の呼び名を付けられたちゅーわけや……」悔しそうにそう吐き捨てる西条。
平次はそんな西条を気にも留めずに尋ねた。
「仏像を独り占めしようとしたのはやはり、金のためか?」
西条は高らかに答える。
「そうや!でも私欲やない。街中に義経流の道場を作るためや!……この寺、頭が住職やっとってなァ……廃寺になった後も、管理は頭がしとったんや!そんで、義経流の道場としてつかわせてもらっとった……」
だが、3ヶ月前に頭が死んだことにより、寺は壊されることになった。それ即ち、寺を道場として使うことができなくなるということ。
それを訊いた平次は、静かに尋ねた。
「1つだけ訊いておきたい。竜円さんは利用しただけなんだな?」
そう問われた西条はニヤリと笑った。
「そうや。前から仏像の話聞いててなァ……オレがあの手紙山能寺に届けたら、案の定相談に来よった……。それで、毛利小五郎に依頼するよう仕向けたんや……」
桜氏を殺したのは、彼の手を借りずともネットで仏像を売る相手が見つかったから。
「もうお喋りはここまでや……その水晶玉を渡してもらおか!」
「渡す代わりに和葉を放せ!」
「ええで?」
案外あっさりと承諾された。だが──
「仏像の隠し場所教えてくれたらなァ!」
タダで放してくれるわけがない。
「何……!?」
「さぁ、仏像はどこや!」
和葉の腕を拘束している手をさらにきつくする。和葉は顔をくしゃっと歪めた。
「この寺の中だ!!」
「何やて!?」
「灯台下暗しって所かな?」
平次はニヤリと笑う。
西条は物凄い剣幕で反発した。
「嘘つけ!この寺はとっくに調べてある!! どこにも──」
「嘘じゃないッ!!!」
平次が怒鳴り返した。
