第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
──第三者side
鞍馬山、玉龍寺。
目隠しをされ、ある部屋に閉じ込められた和葉は外で複数の人間がバタバタと動き回っている音を聞いた。
「刀は“弁慶”、弓矢は“六角”の引き出しにしもとけ!」
そんな会話を聞いた和葉。
(何やろ……弁慶とか六角の引き出しって……)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その頃、蘭は。
「仏光寺?」
山能寺の住職に、コナンと平次、瀬里奈の行方を尋ねていた。
「そう話してるのが聞こえたが……」
それを聞くなり蘭は飛び出して行った。
仏光寺に着き、中をくまなく探したが誰もいない。3人に電話をかけてみても繋がらない。
「ホントにどこ行っちゃったんだろ……。和葉ちゃんに電話しても出ないし……ん?」
蘭はある石に目を奪われた。「『玉龍寺跡』……?」
そばを歩いていた親子に声をかけ、玉龍寺がどこにあるのかを尋ねた。
「鞍馬山の奥の方ですよ。けど随分前に廃寺になったんやないかしら……」
「どうも……」
蘭はぺこりとお辞儀をして、その親子を見送った。
「鞍馬山……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
月がだいぶ高い位置に昇る頃。
松明をたくさん焚いた玉龍寺の本堂前。
翁の面を被った犯人が「……遅いなァ」と呟いた。隣で腕を拘束されている和葉が噛み付く。
「罠だと分かってて来るわけないやん!」
「そうかな?臆病風に吹かれたのかもしれんけど……」
と、そこへ──平次が歩いて来た。
山門をくぐり、しばらく歩いた所で手にしていた木刀を地面に突き刺す。
そして帽子のツバに手をかけ、犯人に向かって啖呵を切った。
「てめぇ!和葉に手ェ出してねーやろな!?」
その口調に少し違和感を抱いた和葉だったが、すぐに取り直して「大丈夫やで平次!」と声をかける。