第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
「次に南北の通りだ……。菫は春の小川の歌から“小川通り”」
「天狗は烏天狗から“烏丸通り”」
「そして富士山は“富”の字から“富小路通り”だ」
そこまで話すと、平次君が不思議そうに言った。
「鶏は何やろ?ドジョウは柳川鍋から“柳馬場通り”やろうけど……」
「鶏?“西洞院通り”でしょ」
私が言うと、2人とも不思議そうな顔をした。
「だって、鳥の方角は西でしょ?」
そう言ってやると、2人とも納得したように頷いている。
「セミはアブラゼミから“油小路通り”」
「天狗は“烏丸通り”だったよね……」
「ほんで金魚は……金魚の餌は麩っちゅーから“麸屋町通り”やな」
地図にそれぞれの絵柄を置いていく。
「そして同じ色の菫と富士山、鶏と富士山、セミと金魚、天狗と天狗を結ぶと──」
「……“王”?何や王って……」
ふと、私はコピーの絵を見た。そこには──
「……点」
「あん?」
「点よ!ここに、こう点を足せば──」
私は鶏と富士山の線、セミと金魚の線の間に点を1つ足した。
すると──
「“玉”になったでしょ?」
「そうか……玉は“玉(ぎょく)”とも読み、宝石の意味がある……」
と、平次君が地図上の点をみて気づいた。
「この場所は……!」
「仏光寺……!」
3人は仏光寺に向かった。
「お宝はもう、見つけたも同じやな!」
「まだ決まってないわよ!早とちりしないの!」
平次君の言葉に私がツッコむ。
と、少し走ってきた所で平次さんの足が鈍った。
「どうした?」
「具合悪いの?休む?」
そう言う2人に、平次君は息切れしつつ答えた。
「いや……ちょっと目眩が……」
「ちょっと……。近くに六角堂あるから、休も?ね?」
私は有無を言わさぬ口ぶりでそう言った。横でコナン君が「こういう時の私の言うことは聞いといた方がいいぜ」と平次に耳打ちしていた。
六角堂のベンチに平次を座らせ、帽子を外させた。
「……うわ、すごい汗」
私は平次君の左隣に座り、持っていたハンドタオルで平次の汗を拭く。そこへコナン君が烏龍茶を持ってきてくれた。
「おお、スマン……」
「ありがと」
私もお茶を受け取り、脇に置いた。ハンドタオルを畳み直して、また違う面で平次君の汗を拭く。
「どうだ、気分は?」
コナン君が訊いた。