第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
小五郎さんはシマリスに、短刀と同じくらいの大きさの筆をくくりつけた。
小五郎さんがシマリスをつつくが、シマリスはふいっとそっぽを向いて頑として動こうとしない。
見かねた子供達が小五郎さんの腕を掴み、「やめて!」「可哀想だろおっちゃん!」「動物虐待ですよ!」と騒ぎ立てる。
「だーっ!ガキャー黙ってろっ!」
小五郎さんは負け犬の遠吠え(らしきもの)の如く、子供相手に大人気なく叫んだ。
いつの間にかコナン君の隣にいた平次君が声をかける。
「工藤……」
「ああ、おっちゃんのおかげで犯人が分かったぜ……」
「オレもや……弓やる者とちゃうかったら“あんなこと”言わんからな……」
「あとはその証拠と……」
「仏像のありかやな……」
私はそんな2人の会話を聞いていた。
そして思う。──くれぐれも、2人とも無茶はしないように。
「可哀想だったね、シマリスちゃん!」
「何か、餌をあげましょうよ!」
「オレどんぐり持ってるぞ!」
元太君がポケットからどんぐりを何個か取り出す。と、手から1粒川に落ちた。
「まるで“どんぐりころころ”だね!」
“どんぐりころころ”……?
思わずコナン君の方を見ると、コナン君も何かに気づいたような表情をしていた。
部屋に戻るコナン君を追って、私も慌てて部屋に戻る。2人でコピーを覗いていると、平次君も駆け付けてきた。
「オイどないしたんや工藤!姉ちゃんも!」
駆け付けた平次君に、コナン君が厳しい顔つきで言った。
「もしかしたら、あのコピーの絵は京都の通りの名前なんじゃないかと思ってよ……」
「何やて!?」
そしてコナンは私の方を向いた。
「瀬里奈、お前、手毬唄は歌えるよな?」
「え?ええ、まぁ……」
そしてコナン君は地図を広げ、説明を始めた。
「まずこの5段目は、“五条通り”」
「じゃあ、4段目は……“四条通り”ね?」
私が訊くとコナン君は頷いた。
「この2段目と3段目の間は、二条通りと三条通りの間で“御池通り”。その証拠に……」
「“どんぐりころころ”……?」
それで平次君はハッとしたらしいが、私はよく分からずきょとんとしていた。「どんぐりころころの歌詞や」と平次君に言われ、やっと合点がいく。
どんぐりころころどんぐりこ、おいけにはまってさあたいへん♪その“おいけ”だ。
