第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
「桜さん以外の殺しも2人の共犯だ……。──警部さん、あんた弓は……」
「そんなややこしい物、やったことあるか!!」
綾小路警部はご機嫌ナナメでそう言った。「本当ですかねぇ〜……」と小五郎さんが言う。
「だが千賀鈴さん、弓をやる人はここが矢じりでこすれて怪我をすると聞きます……」
小五郎さんは千賀鈴さんの左手親指の付け根を指して言った。
「た、確かに……この矢枕の怪我は弓をやってるせいどすけど……」
「!?」
コナン君、平次君の表情が変わった。私もきゅっと眉根にしわを寄せる。
「まだ始めたトコやし、人を射るなんて絶対に出来やしまへん!」
キッと強い瞳で小五郎さんを見返す千賀鈴さん。蘭ちゃんもそれに同調した。
「私もそう思うな〜。ここを怪我するのは初心者の証拠だって、弓道部の友達から聞いたことあるよ?」
「〜〜ッ」
小五郎さんはみるみる内に顔をしかめる。
「それに殺害された時の凶器は刀……」
「弓を使ったのは東京の殺しのうち1人だけですよね?」
白鳥警部に同調するかのように、私もさらりと追い討ちをかけた。千賀鈴さんの隣に座っていた山倉さんが小五郎さんに噛み付く。
「毛利はん!あんた本気でこの子を犯人やと思てはるんですか!」
「あ、いや……その」
「冗談やおまへん!舞妓は、芸事やお座敷で忙しいのどす!人を殺してる暇なんてあらしまへん!!」
そしてコナン君が小五郎さんの袖をくいくいと引っ張る。
「ねぇねぇ。シマリスだけど、あんな小さな体じゃ短刀は運べないんじゃない?」
そう言われ、小五郎さんはいきなり立ち上がった。
「だったら証拠を見せてやる!!!」
あーあ、引っ込み付かなくなっちゃった。