第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
──第三者side
警視庁。目暮警部が机の上に広げたニット帽、マフラー、手袋を見て「ウーム……」と唸っていた。そこへ。
「警部?何を唸ってるんですか?」
高木と佐藤が来た。「これは?」と佐藤が訊く。
「東京で殺害された3人が身に付けていた物でな……。1人は帽子、1人は襟巻き、1人は手袋をしていたんだが……色も柄も生地も同じだ……。妙だとは思わんか?」
その言葉に佐藤が「ええ、そうですね……」と同調する。ただ1人、よく分かっていない高木がクエスチョンマークを頭に浮かべた。
「何がですか?」
「たとえば、白鳥君が1人でこの3つをしてたなら何も不自然じゃないけど……。目暮警部が帽子、私が襟巻き、高木君が手袋をしていたら……何か変じゃない?」
「た、確かに……」
と、高木が苦笑いで冗談のつもり(らしい)で言った。
「まるで白鳥さんが死んで、その遺品を3人で分けたみたいですね……アハッ、アハハハハ……」
と、佐藤と目暮の表情が変わった。
「それだ!」
目暮が高木を指差してそう言った。どうやらクリティカルヒットだったようだ。
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──瀬里奈side
山能寺。
私は子供達や園子ちゃんと一緒に、部屋の外で話が終わるのを待っていた。
「腹減った〜……」
「もう少しだから、我慢して……」
元太君のワガママを小声で注意する。
開いている障子から聞こえるのは、『千賀鈴さんの母親が宮川町で芸妓をしており、彼女が5歳の時に病死している』ということ、『母親が未婚だったためにお茶屋の女将である山倉多恵さんに引き取られた』ということだった。
千賀鈴さんの父親は誰だか分からないが、毎月お茶屋に匿名でお金が送られていたらしい。だが、それも3ヶ月前にぷっつりと途絶えてしまったらしい。