第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
元太君がいたのは六角堂。
ベンチでしょんぼりしながら座っている元太君を見つけ、子供達が駆け寄る。
「よかったね、元太君!」
「もう一生会えないかと思いましたよ〜……」
「光彦君、それは大袈裟……」
私は苦笑しながら軽く注意する。
平次君が興味深そうに言った。
「それにしても便利なモンやなァ……発信器付きのバッジか……」
「ああ、その発信器からでる周波数がこの眼鏡と同調して……」
そこまで言って、2人はハッと気づいたような表情になった。
「服部!」
「そ、そうか!そういうわけか!」
2人は元太君を怖い顔で凝視している。2人の視線は、元太君の持っていたオレンジジュースに注がれている。
「工藤……まさか……」
そう言うなり、2人は走り出してしまった。「あっ、ちょっと!」慌てて私も追いかける。脚が早いことに今日だけは感謝した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
3人は桜屋の下にあるみそぎ川に来ていた。
「間違いねーな……」
「ああ……あの姉ちゃんが聞いた音は、凶器が落ちた音やったんや……」
平次君がコナン君の横にしゃがむ。
「……となると、犯人はやっぱりあの4人の誰か……」
「いや、3人や……」
平次君はコナン君の頭をくしゃっと撫でた。「オレの初恋の人が殺人犯なわけないやろ?」
(オイオイ……)
私は内心で呆れていた。平次君が真顔になって言う。
「ただ、1つだけ気になるんは……さっき聞いた歌とオレの覚えてる歌が1箇所違うんや……」
「え?」
「あん?」
私とコナン君はきょとんとして平次の次の句を待つ。
「初恋の人は、『あねさんろっかく』を『よめさんろっかく』て歌うてたんや……」
何でやろなぁ。そんなことを言う平次君の頭を、私は軽くはたいた。
「知るか」
コナン君も呆れたのか、バッサリそう切り捨てた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その頃、和葉は昨日の襲撃時に落ちていたお面の欠片を探しに来ていた。
「あった!お面の欠片や!」
草むらをかき分けて見つけ出したお面の欠片。そして、そんな彼女を陰で見る怪しい人影が1人──