第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
「あら?でも元太君がいないけど……留守番?」
私はふと気づいて訊いた。すると光彦君が困ったように話し始めた。
「そうなんですよ……元太君が迷子になってしまって……」
「……あらま」
私は苦笑した。コナン君が呆れたように言った。
「だったら探偵バッジで……」
「もう呼びかけて、連絡は取れてるんです!」
だが、歩美ちゃんがしゅんとして言った。
「でも……元太君、漢字が読めないから、今いる場所が言えないの……」
「それで、君のその眼鏡で探してもらおうと思ってな……」
博士がコナン君の眼鏡を指して言った。コナン君が了承し、追跡眼鏡の電源を入れる。と、横から平次君がそれをかっさらった。
「あっ、おい!」
「へー、こらオモロイなァ。あ、あっちや」
勝手に持ち出し、歩き始めた平次君にコナン君は「ったく……」と頭を掻いた。
「ま、平次君に任せるほうがいいわ。彼の方が京都をよく知ってるし……」
「わあってるよ……」
私が言うと、コナンは不貞腐れてそう言った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
歩美ちゃんと光彦君が先を歩く平次の方へ行き、哀ちゃんと阿笠博士、コナン君、私は4人で後ろの方を歩いていた。
「こっちでも事件があったようじゃな……」
「ああ……詳しいことは後で話すよ……」
コナン君がそう返事をすると、突然博士のお腹が鳴った。
「哀君、例の薬を……」と頼む博士。哀ちゃんは鞄から薬を1錠取り出し、博士に手渡した。博士はそれをゴクリと飲む。
「なぁにその薬……?」
「お腹が鳴るのを押さえる薬……。冠婚葬祭用に、博士が開発したの……」
博士すごい。私は素直にそう思った。
「他にもお酒が飲めない人用に飲むとすぐ顔が赤くなる薬や仕事を休みたい人用に風邪と同じ症状が出る薬も開発したんじゃ……。どれも哀君に手伝ってもらってな……」
……前言撤回。
博士よりも哀ちゃんの方がすごかった。