第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
──電車内。コナン君と平次君を座らせ、はそのそばに立っていた。
「大丈夫なのか?安静にしてなくて……」
コナン君が心配そうに言った。平次君はあっさりと「大丈夫や」と言い放つ。
「それで大丈夫じゃなかったらどうするの、ったく……」
私は本日何度目か分からないため息をつく。
「それよりホンマ変わった奴やったで……」
平次君は腕組みをしながら話し始めた。
変わった剣術を使っていたらしく、かなり苦戦したようだ。小手に筋金を入れて、縦にしていたとか。
「それに、傷跡から凶器照合させよ思てわざと短刀出させて切らしたんに……その短刀置いてしまいよった……何でや?」
その言葉にコナン君は考え込む素振りを見せた。
「まだあるで」
「?」
「アイツ、戦うてる最中にオレの落とした巾着拾おうとしてん……ホンマ、分からんことばっかりや」
コナン君はその巾着を平次君から受け取った。そしてからかいがちに続けた。
「まさかその翁……お前の初恋の人だったりして」
「ハハハ、大当たりやな……ってんなわけないやろ!」
平次君はむくれてコナン君から巾着を奪った。
「ね、その思い出の水晶ってヤツ見せて?」
その言葉に、2人は同時に驚いたような顔をした。
「……何で知ってるん」
あ、ヤバイ。これは、アレだ。怪しまれてるパターン。
私はニッコリ笑って答えた。
「私の情報網は日本のみならず海外にも行き届いてるのよ?そんな話、拾うのは容易いわよ」
ホホホ、と笑ってやるがそれはさすがに嘘だ。
調べ物をしていたらついでに知った、というだけ。そう言うと、平次君はホッとしたように水晶を見せてくれた。
「……ふーん。ねぇ平次君、君これはお寺で見つけたのよね?」
「ん?あ、ああ。その女の子がおった所に落ちてたから、その子のやって思て……」
「その時、君は8歳だったんでしょ?女の子はもう少し年上なんだよね?」
一応確認のために尋ねると、平次君はこくりと頷いた。
「ああ……」
「そんな年頃の子が、こんな小さな水晶持ってるかなぁ?それに、無くしたのに気づいてたらこんな何年も放置しないと思うけど……」
これは率直な意見だ。
それこそ、無くしたと分かったら血眼に──ならないかもしれないが、それぐらいの勢いで探すだろう。
それに、雑誌に載っていたなら、すぐに平次君に連絡するはず。