第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
「……ホンマですか?」
その問いに平次君はこくりと頷く。
「……まぁよろしやろ」
綾小路警部は不満そうだったが、そう言って引き上げようとした。ドアを開け、平次君を振り向く。
「……これに懲りて大人しゅうしてることですな」
それに続くように白鳥警部も「それじゃ、私もこれで」と部屋を後にする。「大事にな、平ちゃん」と大滝警部も続いた。
最後に看護師さんが部屋を出て、扉を閉めた。
「私、お父さんに電話してくる」
蘭ちゃんがそう言い、病室を出ていく。
そして、蘭ちゃんが出て行ってから少しした後だ。
「瀬里奈さん、アタシちょっと出かけてくるさかい、平次よろしゅうな!」
「えっ、う、うん……」
和葉ちゃんにそう言われ、私は呆気に取られつつも承諾した。
そして和葉ちゃんが出て行った後、平次君は何やらごそごそとし始めた。
「……何する気?」
「何って……調べにいくに決まっとるやろ?何ゆーてんねん」
「いや、それは分かるけど……あなた怪我人なのよ?傷が開いたらどうするつもり?」
ギロッと睨むが、平次君はビクともしない。何を言っても無駄か。
はぁー、とため息をつきながら、私は自分の上着を羽織った。
何かあったら自分までで責任は食い止めなくては。そう思いつつ。
蘭ちゃんには一応置き手紙を残しておいた。
『蘭ちゃんへ
平次君のワガママに付き合わされて(笑)、調べ物をしに行ってきます。無事に連れて帰るつもりですが、万が一倒れたりすることがあれば私が責任を負うのでご心配なく。あと、和葉ちゃんもどこかに出かけたみたいなので、彼女も並行して捜してきます。──瀬里奈』
「……くれぐれも無茶しないように」
瀬里奈はきっちり2人(特に平次君)に釘を刺した。