第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
──瀬里奈side
梅小路病院。
私はコナンの隣で、平次が起きるのを待っていた。
そして──
「……っ、」
平次君が目を覚ました。
「平次、気ィ付いた?」
「よかった……」
「頭、平気?」
和葉ちゃん、蘭ちゃん、私はそれぞれ声をかける。病室にいた大滝警部が「心配したで、平ちゃん……」と声をかけた。
ゆっくりと平次君が起き上がる。
「大丈夫?」
慌てて体を支えるが、平次君は笑って「平気やて」とそれを拒否した。
「大滝ハン……。それと……誰やったっけ?」
大滝警部の隣にいた刑事に声をかける。確かあの刑事さんは──
「警視庁の白鳥です。殺害された桜正造氏が『源氏蛍』のメンバーだったと聞いて、東京から駆けつけたんです……」
白鳥警部の説明の途中で腕をさする平次君。
「……痛むのか?」コナン君が訊くと、平次は軽く笑って「ちょこっとな」と答えた。
「家宅捜索で、桜氏の店から盗まれた美術品が見つかったんや」
その言葉に、コナン君と平次君はアイコンタクトを取った。私もきゅっと眉間にしわを寄せる。
そこへ。
「気ーつかはりましたか?」
京都府警の綾小路警部が、看護師さんを連れて入ってきた。
看護師さんが前に進み出て、平次に検温を施す。
「警部さん、あの短刀は?」
「鑑定に回さしてもらいます……」
「結果が出たらすぐに教えてや。証拠が足りひんかったら……」
平次君は入院着の肩の部分をはだけさせた。
「この肩の傷も提供すんで……」
するり、と私は平次君のそばを離れる。看護師さんの邪魔になるからだ。
え?っていうか証拠って……。
「え?証拠って……?」
和葉ちゃんがきょとんとしたように訊いた。平次君が真顔になって答える。
「あの短刀が、桜さん殺した凶器やっちゅう証拠や……」
ホンマは犯人の肌に触れてたモンがあったらええんやけど。平次君はそう言った。
「あっ!バイクは!? バイクがあったやろ!」
平次君がそう言ったが、看護師さんに体温計を口の中に突っ込まれた。
「あれは盗難車です……」
綾小路警部が答える。「ところで」と綾小路警部が話を変えた。
「この絵、何なのか分からはりますか?桜氏の自宅の義経記に挟んであったんやけど……」
その言葉に、コナン君と平次君、私は顔を見合わせた。やがて平次がふるふると首を振った。