第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
「ホンマか!?」
平次君が弾かれたように園子ちゃんに喰いついた。
園子ちゃんも「間違いないわ!」と確信を持って答える。
「でもね……警察が川を捜索したんだけど、何も出てこなかったのよ……」
「えっ?」
私はきょとんとしてしまった。そして思わず訊いてしまう。
「気のせいじゃないの?」
「そんなことないです!本当に聞こえたんですから!」
物凄い勢いで言われ、私は「ごめんごめん」と軽く苦笑いした。
「それやったら共犯者や!外に共犯者がおって、川から凶器を拾たんや……」
「それはないと思うよ……」
と、コナン君が口を挟んだ。「何でやくど……やのーてコナン君?」平次君が慌てて訂正する。
「私も同感」
私も同意する。
コナン君は私に話してくれと言わんばかりの視線を送ってくるが、私はそれを無視した。大きなため息の後、コナン君が口を開く。
「今夜は満月で明るかったでしょ?あのベランダ、床に隙間があって下が見えるようになってたし、もしみそぎ川に共犯者がいたとしたら蘭姉ちゃん達が気づくはずだよ……」
その説明に平次君は「そ、そうか……」と少し面食らったように落ち着いた。と、小五郎さんが話し始める。
「真相はこうだ……。犯人は外部犯で、蘭達がベランダに出る前に地下のガラス窓から侵入し、浴室にでも潜んで待ち伏せて、桜さんが納戸に来て物色中に殺害した。そして、凶器を持ったままガラス窓から逃走した……」
「でも、私達は見なかったし、堤防にも目撃者はいなかったんでしょ?」
「偶然だ偶然!犯人はツイていたんだよ!」
ツイていたって……。私は思わずため息をつく所だった。
「んー……なーんか釈然とせんなァ……」
平次君が納得がいかない、というように眉間にしわを寄せる。
「そういえば、2人は帰らなくていいの?」
私はふと思いついて、平次君と和葉ちゃんに訊いた。
2人は忘れていたのか、ハッとして慌てて帰り支度を始める。
「帰り道、気をつけてね」
「何や、心配してくれてるんか?」
「……まぁ、ね」
嫌な予感がする──なんて言えず、私はとりあえず軽く笑って流した。