第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
「うわっ、瀬里奈!」
想像以上のコナン君の反応に、私はむっと眉根を寄せた。
「何よ……そのオバケ見ました的な反応は」
「わ、悪かったよ……ってお前どこから聞いてたんだ!?」
コナン君がぎょっとしたように訊いてくる。私はしれっと答えた。
「んー?平次君の『外部犯だと思うか?』とか何とかの所から?」
そう答えるとコナン君は目を剥いた。
「ほぼ最初からじゃねーか!お前おっちゃんに見張り頼まれてたんじゃねーのかよ!」
「園子ちゃん達にお願いしてきました☆」
「星付けんな!」
……と、いつまでも終わらないであろう言い合いを鎮火させたのは、誰でもない平次君だった。
「姉弟喧嘩はええから、早よ行くぞ」
「平次君……機嫌悪い?」
私が表情を窺うが、平次君はふいっと顔を背けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──桜古美術店。
コナン君、平次君、私の3人は書斎で本棚を探っていた。何か手がかりはあるかと思って。
「……ん?ねぇ新一……」
「あ?」
未だに少し膨れている新一にも怯まず、私はある一冊の本を手渡した。
「これ……」
「ん?義経記じゃねーか……」
「そうなんだけど……表紙の裏……」
私が指差すと、コナン君は表紙裏を見た。そこには──
「『伊勢三郎』!?」
コナン君は慌てて平次君を呼んだ。平次君もそれを見て驚く。
「何!? 桜さんは伊勢三郎やったんか!」
「ねぇ……後、これもあったんだけど……」
私は見つけた紙を差し出した。そこに書いてあったのは──竜円さんから預かった、あの謎の絵と同じ物だった。──菫、天狗、富士山の書いてある段の上に線が引いてあること以外は。
「どういうこっちゃ……。桜さんがこの絵を持ってたっちゅーことは……」
「あの手紙を山能寺に届けたのは……」
「桜さんってことだ……!」
平次君、私、コナン君がそれぞれ言う。コナン君が眉間にしわを刻んだ。
「だが何のために……?」