第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
部屋に戻り、ふと周りを見回すと、コナン君と平次君がいない。
平次君はともかく、コナン君がいないということは──また一緒に捜査してるのか。私は大きくため息をついた。
「……ごめん園子ちゃん。ちょっとズル賢いボウズどもがいるみたいだから……見張り、頼んでもいい?」
園子ちゃんに訊くと、彼女は自信満々で頷いてくれた。そしてこっそり下に降り、平次君とコナン君を見つける。「……いた」
「どう思う?外部犯やと思うか?」
平次君が訊いた。
「ゼロとは言えねーが……表の引き戸は開けると音がして、女将が気づくはずだ……。それよりも、犯人は何らかの理由で桜さんが納戸にいることを知っていた者。つまり……」
「桜さんの知り合いっちゅう、西条さん、竜円さん、水尾さんの可能性が高いっちゅー訳やな……」
2人はそんな会話をしつつ、蘭ちゃん達がいたベランダに出る。私もこそこそっと気づかれない程度について行く。
「3人とも、桜さんや蘭達が出て行った後で一度ずつトイレに立っている……。しかも、すぐ近くには地下への階段がある……」
「3人ともトイレに行くフリして、納戸におる桜さん殺すことは可能やったっちゅー訳やな……」
言いつつコナン君は納戸のそばにあった洗面所らしき所の戸を開けた。
「ただ1つ気になるのは……水尾さんがトイレに立った時に、千賀鈴さんがついて行ったことだ」
「舞妓さんは皆そうするみたいや。でも……」
2人はトイレの近くの横長の窓を見ながら会話をしている。
「竜円さんと西条さんの時は行かへんかったけどなァ……」
平次君は不思議そうにそう言った。コナンが答える。
「あれはおっちゃんとゲームをしてたからだよ!……逆に言えば、その時を狙ってトイレに行ったのかもしれない……」
「っちゅーことは……竜円さんか西条さんが犯人なら、水尾さんはシロか……」
「千賀鈴さんが共犯じゃなければな」
コナン君はニヤリと笑ってそう言った。途端に平次君が嫌そうな顔をする。
「……せやな。ほな行こか?」
「えっ?」
「とぼけたらアカン。そのために桜さんのポケット探ってたんやろ?」
思い出したようにコナン君は懐から鍵束を取り出した。
「……ああ、これか。──確か桜さんの店は寺町通りだったな」
そこで私はひょいっと顔を出す。
「なーに姉貴に黙って抜け駆けしようとしてるのかな〜?」