第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
「全員中に入らないように!蘭、警察に電話だ!」
「はい!」
小五郎さんが的確な指示を飛ばす。蘭ちゃんが急いで電話をかけにその場を離れた。
「鋭利な刃物で頸動脈を切られている……」
「見事な切り口や……」
私は小五郎さんと平次君の言葉を出入り口で聞いていた。
「一連の事件と同一犯でしょうね……多分」
私はぽつりと呟いた。義経記を持っているということ、鋭利な刃物で斬り殺されているということを踏まえても、それは明確だ。
水尾さんが死体を検分していた平次君を見て、呆気にとられつつ言う。
「君……どこかで見た顔や思たら……」
「高校生探偵の服部平次君……?」
西条さんも続けて言った。
平次君は立ち上がって「そうや」と答える。
「みんな警察が来るまで、さっきの部屋におってくれへんか?」
「絶対に、外には出ないように……」
小五郎さんもそう言った。
「瀬里奈ちゃん、悪いが……」
小五郎さんに目で訴えられ、私は大きく頷いた。
「……分かりました。では皆さん、上に戻っていましょう」
私が小五郎さんに言外に言われたのは、『ここにいる関係者全員を見張っておいてくれ』──そういうことだった。