第3章 ゴールデンアップル
無事ブロードウェイに着いた(問題なしとは言えなかったが)。
シャロンさんと落ち合い、舞台裏を覗かせてもらった。ミュージカルに出演する女優──リラ、アカネ、ローズ、イベリス──とも知り合った。
だがそこで不吉な言葉に出会う──
「金の林檎?」
新一からその言葉を聞いたとき、私は何か嫌な予感がした。
「らしいぜ?この楽屋に送りつけられたんだと」
「って、それ誰情報よ?」
「あのシャロンって女優だよ。訊いたら教えてくれたんだ」
「へえ……」
私は意外な思いでシャロンさんを見つめる。それに気づいたシャロンさんもまた、私をじっと見ていた。
「でもなんで上に衣装が吊ってあるんですか?」
ちょうどいいやと思い、疑問に思っていたことをシャロンさんに訊いた。シャロンさんも上を見て、「ああ」と答えた。
「下に置いとくとかさばるでしょ?でも舞台で使わなくちゃならないからそうやってあるのよ」
「へえ〜」
思わぬ豆知識獲得。
だが──
ビィン!と音がして、その刹那に鎧が落ちてきた。
「えっ!?」「Oh!!」
キャスト達はそれぞれに避難するが──ローズだけ動くことができずにいた。
「NO〜〜〜〜〜!!!」
蘭ちゃんが先に動き、私はその上に覆いかぶさるようにローズ達をかばった。
「大丈夫蘭ちゃん!」
「は、はい!」
ローズが恐怖し、他のキャスト陣がそれを宥める。
ふと、蘭ちゃんが腕をすりむいているのを見つけた。絆創膏を探そうとするが見つからない。と、そこへシャロンさんがハンカチを彼女に差し出した。
「やっぱり神様なんていないわね……。いたらこんな酷い仕打ちしないもの」
そんな謎の言葉を残し、シャロンさんは舞台を後にした。
「……ごめんみんな、私先にホテルに戻ってるね」
「え?なんで?」
お母さんに訊かれたが「金の林檎の話とかさっきのとかで怖くなっちゃったからさ」と答える。
「それは構わないけど……瀬里ちゃん、通り魔に気をつけなさいよ?」
「通り魔?N・Yにもいるんだねー」
あっけらかんと言うと、新一が呆れたように口を挟んだ。
「オメーは人目を引きやすいから特にだよ」
「どこが人目を引きやすいの?とにかく、私帰るね」
笑顔で手を振って3人と別れた。
残った3人がはぁ……とため息をついていたのを私は知らない。