第15章 映画編・迷宮の十字路 〜前編〜
まさか主君を棒で叩く家来はいないだろうと考え、義経達一行は無事安宅の関所を通過できたのだ。
「後で弁慶は涙ながらに義経に謝るが、義経は弁慶の機転を褒める。2人の絆の深さが分かる、ええ話やなぁ」
と、桜さんが後ろにいた女将に尋ねた。
「すまんがここん所寝不足でな。下の部屋で休ましてもろてもええやろか?」
女将が隣の部屋で寝たらどうか、と提案するが、桜さんは「下の方が落ち着くから」と言って席を立った。
桜さんは女将に9時に起こしてもらうように頼み、その場を離れた。
桜さんがいなくなると同時に、園子ちゃんは障子を開けた。「わぁっ、川が見える〜!」
「鴨川どす……」
先ほどの舞で唄っていた芸妓さんが答えた。
「桜が綺麗〜……」
「ホンマや!」
和葉ちゃんも園子ちゃんの隣に行って眺める。
「鴨川から桜を眺めるのもいいけど、下に流れてるみそぎ川を挟んで眺めるのも格別よ」
横から私はひょいっと口を挟む。女子3人組は不思議そうにこちらを見た。
「何でそんな詳しいんですか?」
「ん?……京都は一番好きな場所だから、かな」
我ながら苦しい言い訳。
もう10年以上もこの子達に嘘をつき続けていると思うと、何だか悲しくなって来た。
「本当、綺麗ね〜……」
蘭ちゃんが感嘆の声を上げる。と、後ろで──
「いやぁ〜、綺麗っスねぇ〜」
小五郎さんが千賀鈴さんの手を取り、頬ずりをしていた。
「まるで白魚のような指……食べちゃいたい♡」
「小五郎さん……それセクハラ……」
呆れて注意するが、酔っている小五郎さんは意に介さない。
千賀鈴さんの手を食べるフリをすると、「ん?」と何かに気づいたような表情になった。彼女の左の親指の付け根に絆創膏が貼ってあったのだ。
「怪我……しちゃったのかな?」
「へ、へぇ。ちょっと……」
千賀鈴さんは慌てて手を胸元に引き寄せる。
「小五郎ちゃんが治してあげるよ〜ん♡」とか何とか言っている内に、蘭ちゃんから雷が落ちた。
コナン君も呆れながらその様子を見ている。
「おい、あれ見てみぃ……」
平次君はコナン君を呼ぶ。
外では綾小路警部が1人で歩いていた。2人はそれを不思議そうに見ている。
「君ら、下のベランダ行って夜桜見物して来たらええ。今晩はじきに雲も晴れてええ月が出るそうやで……」
水尾さんに言われ、JK3人組が下に降りた。
