第15章 映画編・迷宮の十字路 〜前編〜
「いつかまた……巡り会えるんちゃうかなと思て……」
平次は遠い目をしてそう言った。と、コナンが「ククッ……ク……」と喉で笑う。
「オイ。何笑てんねん」
「悪ィ悪ィ……。続けて?」
コナンはまだニヤニヤしながら話を促した。平次はポケットから例の巾着を取り出した。
「京都に来る時はいつも持って来とんねん……」
そして水晶玉をコナンに見せる。コナンは目の前に翳したり覗き込んだりした。
「どっかで見たことある形だな……」
コナンがそう言うと、平次はパッと表情を明るくさせた。
「ホンマか!?誰か同じの持っとるんか!?」
だが、コナンはあっさりと「いや?」と否定した。期待していたらしい平次はがくり、と肩を落とした。
「そんで?彼女はこのこと知ってんのかよ」
「彼女って……ああ、和葉か。詳しいことは話してへんけど、知ってるみたいや。そもそも、あいつがこのこと知ったんは……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その頃、女子3人組。
「雑誌のインタビュー記事?」
蘭が問い返した。
「そ!」と和葉は1つの記事を取り出してくる。
「関西でめっちゃ人気のある情報誌でな。この本で平次、初恋について訊かれてて……『小学校3年生の頃に会うた、ちょっと年上の女の子』って答えててん!その上『その女の子にまつわる大切な品や』ゆーてこんな写真まで撮らしてんねんで!?」
和葉が指差したのは、例の水晶玉を顔のそばまで掲げて満面の笑みで写っている平次だった。
「何なのコレ……」
「ただの水晶玉。その女にもろたんと違う?」
「じゃあ和葉ちゃんはその女の子のこと……」
蘭が訊こうとすると、和葉が先に言った。
「知ってるわけないやん!……平次も会うたんはその時だけみたいで……京都に来る度に捜してるみたいやから……」
「あっ、それで水晶玉を写真に!もしかしたらその女の子がこの記事を読んで連絡して来るかもしれないと思って……」
園子が閃いたと言わんばかりに勿体ぶって言った。
和葉が瞬時に「ヤラシイやろ!?」と園子に同意を求める。園子もうんうんと頷いた。
「おまけに、その頃の写真まで載せてるんやで!?」
「わっ、可愛い!」
蘭が言うと、和葉は我が意を得たりとばかりに目を輝かせた。
「そやろ!?この頃の平次めっちゃ可愛……ハッ」
和葉はすぐに我に返った。