第15章 映画編・迷宮の十字路 〜前編〜
──瀬里奈side
女子チームは清水寺、探偵達2人は昼食休憩へと入る頃、私は1人でふぅー、とため息をついていた。
「……ここなら少しは情報が入るかと思ってたのに、な……」
私のいう『情報』とは、今絶賛入院中の彼『手波桂羅』のことである。彼は昔から自分のことを教えようとはしなかった。辛うじて分かっていたのは、桂羅が組織に潜入していた諜報員(ネズミ)の息子であるということ、そして──父が彼を私の踏み絵に利用しようとしたことくらいだ。
「……ま、でもいいか。元々ここには懐かしさを味わうために来てんだし……」
うまく情報を搾り取れなかった苛立ちを誤魔化すかのように自分に言い聞かせる。
「それに、これ……」
私はコナン君が移動する度に睨めっこしている絵のコピーを開いた。
「どこかで見たことあるんだよね〜……」
うーんと唸るが、それがどこなのか思い出せない。そして、絵にあるこの『点』……書き損じならまた書き直せばいいものを、これはわざわざ残してある。ということは、これは意味があると捉えていいのだろう。
「……あーもうっ!」
どっちも気にはなるが、二兎追う者は何とやら、である。私は目下の目標としてこの絵の謎を解くことに専念しようと努めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──第三者side
その頃、平次とコナンは桜並木の中を歩いていた。
ふと、平次が「桜か……」と小さく呟く。コナンが頭にハテナマークを浮かべると、平次は「いや……」と説明を始めた。
「桜見るといっつも思い出すんや……8年前のこと……」
そう言って、平次はコナンに話し始めた。
「オレは京都の寺を探検してて、格子窓に飛びついたんや……そしたら床にしこたま頭打って、気絶してしもてな……」
どれくらい眠っていただろうか。平次は桜を見上げながら言った。
だが、ふと目を覚ました時、外から歌が聞こえたのだそう。
格子窓によじ登り、外を見ると──平次よりも少し上くらい、着物を着て、手毬をつきながら京都の通り歌を歌っている少女を見つけた。
だが、強い風が吹いたその一瞬で少女は消えてしまった。
もちろん平次は慌てて外に行き、その少女を追う。だが少女の姿はもうなく、平次はため息をついた。そこでふと目に入ったのが水晶玉だった。
「……夢みたいやけど、ホンマの話や」