第15章 映画編・迷宮の十字路 〜前編〜
──瀬里奈side
所変わって、東京。
私は部屋を片付けている時、ふと昔のアルバムを発見した。
「あら、これ……」
私は「懐かしいなぁ〜」などと言いながらアルバムをめくる。10年前、組織の追っ手から逃れる時にこっそり持ってきた写真達もある。
「うわぁ、この時って……」
それはまだ私が9歳になったばかりの頃だったろうか。組織の仕事で京都に赴く父に付いて行った時の写真だ。
「そうそう、この時に桂羅兄と会ったんだよね……」
私は懐かしさからか、ふいに涙腺が緩むのを感じた。慌ててきゅっと引き締める。家でもどこでも、あまり泣くのは好きじゃない。
「あの時にわらべ唄教わったんだよね……えーっと、確か……」
私はぶつぶつと小さく呟く内に、歌詞を思い出した。
「まる たけ えびす に おし おいけ
あね さん ろっかく たこ にしき
し あや ぶっ たか まつ まん ごじょう
せった ちゃらちゃら うおのたな
ろくじょう ひっちょう とおりすぎ
はっちょう こえれば とおじみち
くじょうおおじで とどめさす♪……ふふっ、懐かしい」
瀬里奈は口に手を当てながらくすくすと笑った。
「久しぶりに歌ったわ……京都の通り唄。あんじょう歌えとったでしょ、桂羅兄?」
私は虚空に向かって照れ笑いをした。
──古都、京都。
「……行きたいなぁ……」
私は小さく呟いた。