第15章 映画編・迷宮の十字路 〜前編〜
数日後、警視庁の記者会見にて。
《えー、捜査の結果……東京、大阪、京都で殺害された5人は、盗賊団『源氏蛍』のメンバーであることが判明しました》
目暮警部が厳しい面持ちでそう言った。集まった記者達はそれを聞いて騒然としている。
《従って、今回の事件は──》
目暮が話している間に、出入り口付近に立っていた佐藤と高木がひそひそと話し始める。
話題は目暮の隣に座っている京都府警の警部についてだ。
『佐藤さん、あの京都府警の綾小路警部は、白鳥警部の同期だそうですね!』
『ええ、公家出身であだ名は「おじゃる警部」!ホラ、左のポケット……』
言われて高木は綾小路警部の左ポケットを見た。そこには──
『……何スかあれ!?』
『ペットのシマリス。いつも連れて歩いているそうよ。白鳥君以上の変人ね』
佐藤からの説明に、高木は呆れて半眼になった。
それからまた説明が入る。
『源氏蛍』は、平成3年頃から、東京、大阪、京都を中心に、有名な仏像や秘仏を盗んでいるらしい。また、メンバーの特徴は、みんな義経の家来の名で呼ばれ、義経記を所持していることらしい。
首領は義経、以下、弁慶、伊勢三郎ら8名が所属。今回、この3名を除く5名が殺され、義経記を持ち去られていることが判明したそう。
「犯人の手がかりは?」
記者の1人に聞かれ、記者会見に参加していた大滝警部が元々の強面をさらに渋くさせた。
《剣道と弓の達人っちゅうことは確かですが……義経、弁慶、伊勢三郎については、年齢も性別も分かってないんですわ……》
彼はさも降参というように手を上にあげた。最後に目暮が締める。
《いずれにしろ、犯人と盗賊団の残りのメンバーを捕まえるべく、全員捜査を続けていく所存です》
パシャパシャとフラッシュが沸騰した。