第15章 映画編・迷宮の十字路 〜前編〜
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──第三者side
──東京
東京都西国立市にある、とある神社。ニット帽を被り、タバコに火をつける亀井六郎、手袋をして何かを大切に持っている片岡八郎、辺りをきょろきょろと見回している鷲尾七郎の3人は、武蔵坊弁慶と名乗る人物に呼び出されていた。
彼らは武蔵坊弁慶をよく知っている。知っているが故に油断は大きい。
完全に弁慶を信頼して待っている3人に、翁の面を被った誰かが足音を立てずに近づいて行く。
「遅せーな、弁慶のヤツ……」
亀井六郎がふかしたタバコを地面に捨てた。
「ああ、『謎は解いた』と言っていたが……」
片岡八郎がある物を見つめながらニヤリと笑う。そのある物とは──義経記だった。その本の間には何やら紙が挟まっている。
階段の段差を正面から描いたような絵に、天狗やどんぐりなどが描かれている。
「ヤツが1番コイツに熱心だったからな……」
言いつつ片岡八郎は紙を見つめた。
そこへ──
「!? ──ぐあぁっ!」
片岡八郎が矢に貫かれた。貫いた矢を放ったのは──先ほどの翁の面を被った男だった。いや、男かどうかすら分からない。
その人間は素早く鷲尾七郎の元へ行き、手にしていた真剣で彼を真っ二つに斬り裂く。その足で亀井六郎も斬り殺した。
そして、刀を鞘に収めた後、3人がそれぞれ持っていた『義経記』を手に取り、静かにその場を去って行った──
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──大阪
寝屋川市にある、たこ焼き屋『たこ平』の店主・備前平四郎も、翁の面を被った人間に殺されていた。
その人間はまたもや、備前平四郎が持っていた『義経記』を持ち去ったという。
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──京都
東山区にある『スナック・ジロー』。ここの店主である駿河次郎もまた、翁の面を被った人間に殺された。
彼も『義経記』を所有していたが、それが無くなっていたことから、犯行後にその人間が持ち去って行ったと思われる──