第14章 もう戻れない2人──本堂瑛祐
杯戸中央病院に車を走らせる。
病院に着くと、ジョディさんと赤井さんが立っていた。
「ジョディさん!赤井さん!」
私が声をかけると、ジョディさんと赤井さんがそれぞれ目を少し丸くしていた。
「瀬里奈さん!?どうしたのこんな所で」
「珍しいな。何か用でもあるのか?」
不思議そうに尋ねてくる2人に、私はこくりと頷いた。
「ええ、まぁ……。それよりも」
私は声を潜めた。
「水無怜奈さんの容態は……?」
そう訊くと、2人は揃って首を横に振った。
「まだ目を覚まさないわ……。かなりの重体みたいね」
「そう、ですか……」
私はそれだけ言うと、スッと2人の横を通って院内へ入った。
ナースセンターに向かい、『本堂瑛祐の白血病の手術の時にいた看護師』を探し出す。
その場にいたナースに無理を言い、その人物を連れて来てもらった。
「すみません、お忙しい中……」
「いえ。それよりも、急ぎでお聞きしたいことがあるんですよね?」
看護師さんはそう言うとニコリと笑った。私は少しホッとしつつ、写真を取り出した。
「この子……本堂瑛祐君なんですけど、彼が白血病の手術を受けた時、骨髄移植しませんでしたか?」
そう訊くと、看護師さんは申し訳なさそうに眉を八の字に下げた。
「……ごめんなさい、患者さんのことはあまりお話できないのよ……」
「どうしても知りたいんです!じゃないと彼、危ないかも……」
「ええっ?」
あ、やばい。
私は咄嗟に口を押さえたが、看護師さんは怪訝な顔をしていた。仕方なく私は話す。
「ちょっと詳しいことはお話しできないんですが……。瑛祐君のお姉さんのことについて、少し調べていまして……もし、瑛祐君に骨髄移植したのがお姉さんなら、お姉さんもO型だったりするのかな、と……」
しどろもどろな私に、看護師さんは何とか納得してくれて、一応ではあるが教えてくれた。
「……確かに、骨髄移植をしたのは瑛祐君のお姉さんよ」
「骨髄移植って、血液型が一緒じゃないと出来ないんですか?」
首を傾げた私に、看護師さんは首を横に振った。
「いいえ、必ずしもそうとは限らないのよ。骨髄移植ってね、白血病に冒された骨髄の血を、放射線に当てて破壊してから移植するのよ。だから、手術後は移植された骨髄の血液型になるの」