第14章 もう戻れない2人──本堂瑛祐
「……じゃあ、瑛祐君はお姉さんの骨髄を移植したから……お姉さんと同じ血液型ってことですか?」
「そうなるわね。確かお姉さんの……瑛海さんだったかしら。あの子は確か……AB型だったはずよ」
カルテを見ればもっとはっきりするはず、と看護師さんはカルテを探そうとしてくれるが、私は手を横に振って「気にしないで下さい」と言った。
本堂瑛海がAB型……。骨髄移植では、移植した人間の血液型になるなら……瑛海さんと瑛祐君は同じ血液型になるはず……。
「……確か、水無怜奈もAB型だったわね……」
「どうかした?怖い顔してるけど」
看護師さんに顔を覗き込まれ、私はパッと笑顔を貼り付けた。
「いえ!教えてくださってありがとうございます!すいませんでした、こんな時間に無理を言ってしまって」
「いいのよ、瑛祐君のお友達なら気にしないわ」
お友達、か……。高校生に見えるのかな、私。
地味に気になったが、今はそれどころではない。
「水無怜奈=本堂瑛海っていう確証はないけど……可能性は高いわね」
誰かが彼女にカマかけてくれれば楽なのに……。
瀬里奈が自分でFBIの監視下にある彼女にカマをかけるのはかなり危険だから、他の人にやってもらえれば、といういわゆる他力本願。
最後にそっと水無怜奈の病室を覗く。FBI捜査官が物凄い形相でこちらを見た。それのせいで少し腰が引けたが、ここまで来たら水無怜奈を見舞うのは当たり前。それに本堂瑛海の写真と照合する必要もある。
「ごめんなさい、少しだけ……」
私は営業スマイルを浮かべ、水無怜奈と写真の本堂瑛海を見比べた。──見れば見るほどそっくりだ。
「……考え直す必要アリってね」
私はそう呟き、病室を出た。
病院を出て携帯の電源を入れる。と、コナンからメールが入っていた。
『事件は解決した
詳しいことはまた今度話す』
あまりに簡潔すぎて私は拍子抜けした。
「今度って……」
私ははぁー、と大きくため息をつき、車のエンジンを入れた。