第14章 もう戻れない2人──本堂瑛祐
「ホー……いなくなった彼女を捜してほしいと……?」
「は、はい……」
依頼人の三角篤さんが話すには、一緒に住んでいる彼女が、朝起きたら急にいなくなっており、彼女の実家に電話してもいなかったそうだ。携帯の電源も落とされているらしい。出て行った原因は、恐らく昨夜の彼女との口喧嘩……。
「よかったらその口論の内容を聞かせてもらえますか?」
小五郎さんがそう言い、ふと後ろを向いた。
「おい、お前らは向こうに行ってろ!」
その場にいた小五郎さん以外の5人が後ろで真剣に聞いていた。その中には私もいる。
三角さんが気を遣い、「よくある口喧嘩だから構わない」と言ってくれ、全員でその口論の内容を聞かせてもらった。
いつも通りの口喧嘩だったらしいのだが、一通り文句を言い合った後、彼女が言ったのだという。
『あなたは変わってしまったわ!私はちっとも変わってないのに!』
『もう戻れないんだよ!出会った頃のようには!』
「……へぇ〜……」
私は少し考えた。
“戻れない”か……私が彼女なら、きっと──
「……もしかしたら、2人が出会った場所にいるんじゃないですか?」
私が言うと、コナン君が少し驚いたような顔でこちらを見た。だがすぐに「うんうん」と頷く。
「出会った場所って……」
三角さんに怪訝な顔をされたため、私は慌てて説明を付け加えた。
「あっ、すみません。私が彼女さんなら、出会った頃に戻るために2人が初めて出会った場所に戻るんじゃないかなぁって思って……」
私がそう言うと、小五郎さんが三角さんに訊いた。
「お二人が出会った場所というのは?」
「ぐ、群馬のスキー場ですが……」
三角さんに言われ、全員が移動するかと思いきや、園子ちゃんは『雪が降っている』という理由からパス。
「瀬里奈姉ちゃんは?」
コナン君に訊かれたが、私は「私もいいや」とパス。
結局、スキー場に向かったのは三角さんと小五郎さんと蘭ちゃんとコナン君、そして瑛祐君だ。
「事件の真相、分かったら教えてね」
ひそっとコナン君に耳打ちすると、コナン君も自信ありげに頷いた。