第14章 もう戻れない2人──本堂瑛祐
ドアを開けて普通に入ってくると思いきや、入って来た少年は何に躓いたのか、コナン君を巻き込んで転んだ。
「す、す、すみません……何かに躓いてしまって……」
メガネメガネ、と床を捜すが、彼は裸眼がかなり悪いようで、なかなか見つけられない。挙げ句の果てにコナン君を小五郎さんだと勘違いするほどだった。
眼鏡をかけ、今度こそ小五郎さんの方を向いて自己紹介をした。
「初めまして毛利探偵!僕、本堂瑛祐と言います!どうぞよろし……くっ」
言葉が詰まったのは、お辞儀をした時に、前にいたコナン君に顔面が当たったから。
そして後ろの戸棚によろけてぶつかる。
「あ、そこは……」
私が止めようとするが、瑛祐君は「ヨ、ヨロシ……」と挨拶し続けようとする。そこへ──
上にあった段ボールが瑛祐君の頭に落ちて来た。「クッ、クゥ〜……」
「段ボールが落ちやすいから……って遅かったか」
あまりに可哀想なので、とりあえずぶつけた頭のところを軽く撫でた。瑛祐君がきょとんとする。
「ちょっとドジなだけだから……」
と蘭ちゃんが執り成すが、瑛祐君は「ドジじゃなくて運が悪いだけですよ!」と反論した。
「トーストを落としたら、100%バターを塗った面が下になるし……キャンプに行けば、真っ先に蚊に刺されるのは僕だし……みんなで写真を撮れば、なぜか僕だけ目をつぶってるんです……。神様に嫌われているとしか思えません!」
「うーん……これで女の子なら萌えキャラなんだけどねぇ……」
園子ちゃんの言葉に私もうんうんと頷いた。
瑛祐君は、小五郎さんの運を分けて欲しくて彼に会いに来たのだという。
「運を分けてもらいにって……どういうこと?」
私が訊くと、瑛祐君はキラキラとした目で言った。
「だって、寝てる間に事件を解決に導いてくれるなんて超ラッキー!!きっとその時だけ、あなたに神様が降臨しているんですよ!!」
「か、神様って……」
瑛祐君はものすごい剣幕で、とにかく眠りの小五郎を見せてくれ、と小五郎さんに詰め寄った。
だが、今彼が受けている依頼は浮気調査とストーカー調査程度で、眠りの小五郎をやるほどの事件ではないらしい。
そこへ──
「あのー、すみません……毛利探偵事務所はこちらでよろしいでしょうか?」
濃い髭の男──三角篤さんがドアを開けてそう言っていた。