第14章 もう戻れない2人──本堂瑛祐
「こんにちはー」
私が毛利探偵事務所のドアを開けると、小五郎さんが何だかカッコつけていた。
「えと……小五郎さん?」
「あ、瀬里奈ちゃん!どうだ?今のオレ、カッコよかったか?」
キラキラとした瞳で見られ、私はうっと言葉に詰まった。
「え、ええ……いいんじゃないですか……?」
「本当か!よっしゃー!」
子供のようにはしゃぐ小五郎さんに、私は苦笑した。
実を言うと、カッコいいというよりは誰かのモノマネかと思ったのだが──それは言わないでおこう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
外が少し賑やかになった。
「あら……帰って来たみたいですよ?」
私がドアの方を向いて言うと、小五郎さんは背広と髪を直して椅子に座り、カッコつける準備を整えた。
ガチャリ、とドアが開く。
「やあ、お帰り蘭……早かったな……。帰った所悪いんだが、コーヒーを一杯淹れてくれないか……?どうやらお前の淹れたヤツじゃないと、俺の脳細胞はヘソを曲げて目を覚まさないようだ……」
そんな小五郎の台詞に、ドアを開けた蘭ちゃんはもちろん、一緒にいた園子ちゃんやコナン君も呆れた顔をする。
「ふふ、お邪魔してます♪」
私が3人に手を振ると、3人は驚いたような顔をした。
「えっ、お姉さん!?」
「お姉様!」
「瀬里奈姉ちゃん!」
それぞれに目を丸くしており、園子ちゃんに至っては私に抱きついて来た。
「お姉様ぁー!」
「わわっ、ちょっと園子ちゃん!」
いきなりの行動に慌てふためくが、1つ深呼吸をして園子ちゃんを引き剥がす。
「っていうか……何で小五郎さんがカッコつけてるんです?それに園子ちゃんまで来てるし……」
私が首を傾げると、蘭ちゃんが答えた。
「この前私のクラスに転校生が来たんですよ。それで、ウチに来たがってたので……」
「ふぅん……」
私は少しだけ興味を惹かれた。
「でもねぇ……たかが高校生の男の子に格好つけなくても……」
園子ちゃんが呆れたように小五郎さんに言った。すると彼はきょとんとした顔で、
「お、男の子?あれ?アナウンサーの水無怜奈さんによく似た女子高生じゃなかったか?」
と言った。
「え?女子高生……?」
私はきゅっと眉間にしわを寄せる。
その時、コンコンとノックの音がして、ドアが開いた。